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王子(NL)

 ウインドウに飾られていたグラスに惹かれて、アンティークショップに入った。可愛らしい小物もチェックしながら、お目当てのグラスに近づいていく。グラスにつけられた値段のタグを見て、どうしようかと悩んでいるとき、視線を感じた。

 視線を感じた方に目をやると、金髪碧眼の王子様――の人形がこちらを見ていた。頭には小さな王冠、ぷっくりとした頬が可愛らしい。

「珍しいでしょう。男の子のビスクドールは、数が少ないんですよ」

 紅い中世風の服を着て、黒い手袋をした男がニコニコしながら話しかけてきた。この店の店員らしい。

「そうなんですか? 確かに、見たことがないかも。でも、どうしてなんでしょう。男の子のドールも可愛いのに」

「専門家ではないので確かなことは申せませんが、ビスクドールはもともと、子ども向けの人形ではありませんでした。やんごとなき姫君たちに新作の衣装を宣伝する目的や、いわゆる流行りを伝える役割があったようです。店で売る、新作のドレスをビスクドールに着せていた」

「じゃあ、この子もそういう理由で作られたドールなんですか?」

 サナが王子様の人形を指差す。

「いいえ。この子は割と最近作られたようですよ」

 サナは「ふうん」と言いながら、人形に視線を戻した。彼が、自分に微笑みかけてくれているような気がした。

「ずいぶん気に入られたようですね」

 店員の言葉に、サナは「ええ、可愛いですから」と答えた。

「そうではなく――ドールがお客様のことを気に入ったようです。よろしければ、連れて帰ってあげてくれませんか」

「え。待ってください、私、あんまりお金持ってなくて――」

「差し上げます」

 サナは驚いたが、結局、人形を連れて帰ることにした。ただ、無償でもらうのは申し訳なかったので、悩んでいたグラスを購入した。

 帰宅すると、ベッド横の棚の上に人形を座らせた。人形は端正な顔立ちで、相変わらず美しい微笑みを浮かべている。

(可愛いなぁ。でも、タダでもらっちゃって良かったのかな? すごく高そうなのに)

 サナはしばらく人形を眺めた後、眠った。

 眠っていたはずのサナは、身体を揺すられて目が覚めた。

「うーん……」

「おい、メイドのくせに俺の部屋で居眠りとは良い身分だな」

 目を開くと、そこはいつもの自分の部屋ではなく――テレビや雑誌、ファンタジーものでしか見たことのないような中世ヨーロッパの貴族の寝室だった。

「ここどこ? ってか、メイド……?」

「寝ぼけてんのか? お前のことだよ」

 苛立たし気な声の主の方を見ると、そこには人形そっくりの格好をした男がこちらを睨みつけていた。サナはぽん、と手をうった。眠る前にあの人形をじっくり眺めたから、こんな夢をみているのだ。それにしても妙にリアルな夢だ。王子からはふわりと花の香りが漂ってくるし、足元の高そうな絨毯の感触も、先程まで突っ伏していたテーブルのニスの触り心地も。すべてがまるで本物のようだ。

 人形そっくりの王子がサナの頬を思いっきりつねった。痛みまでもがリアルだ。

「いてててててて」

「だからさっさと起きろって! ここは、俺の部屋! お前はメイド! さっさと思い出せよ」

 サナは涙目になりながら、王子から慌てて離れる。まさか手を出してくるとは。立ち上がったとき、自分がスカート丈の長いメイド服を着ていることに気がついた。

(ここじゃ、本当に私はメイドなんだ……)

「つーか、なんでお前、裸足なんだよ」

 サナはあたりをきょろきょろと見渡した。窓際に、黒いヒールが落ちているのが見えた。おそらく、自分のものなのだろう。駆け寄ると、黒いヒールを履いた。サイズもぴったりだ。やはり、サナのものらしい。

「じゃ、さっさと出て行ってくれ」

 サナは「はい、失礼いたしました!」と言って、元気よく出ていこうと扉を開いた。しかし、その先は部屋の外ではなく、バスルームだった。

 後ろから、先程の王子が大笑いする声が聞こえてくる。振り返り、腹を抱えて笑っている王子にぺこりと頭を下げた。

「……間違えました」

「はは……お前……入ってきたところも忘れたのか?」

「実は……ドアを通ってここに来たわけじゃないんです。その……出口を教えてもらえますか?」

 これでは完全な不審者だ。だが、これは夢だから気にすることはない。

「じゃあ、どうやって来たんだよ。飛んできたのか?」

「気がついたら、ここにいました」

 また王子が笑い出す……かと思ったが、急に真剣な面持ちになった。

「そういえば……見ない顔だな。俺は、一度見た顔は忘れないんだが……うん、やはりお前のことは知らないな」

 王子が腰に下げた剣に手を添えるのを見たサナはぎょっとした。殺される夢なんてごめんだ。

「新人なんです! 今すぐ出ていきます!」

 サナはそう言うと、バスルームに続いていたドアとは別のドアを勢いよく開けて、部屋から飛び出して行った。

「おい、待て――お前、名前くらい教えていけよ」

 サナのすぐ後に王子も廊下に出たが、そこにはもう彼女の姿はなかった。

 目を覚ましたサナは、ベッドの横の棚に置いた人形を見た。

「あの夢は……あなたのせいなの?」

 人形に問いかけても答えはもらえない。夢のことが気になっては居たが、仕事、人間関係……一日が終わる頃にはすっかり疲れ切っていて、いつものように眠りについた。

 目が覚めると、昨夜と同じ王子の部屋に居た。着ている服は相変わらずメイド服で、靴も昨日と同じように窓際に脱ぎ捨てられている。窓際の靴を拾っていると、バスルームの扉が開き、裸の王子が現れた。サナは思わず「うわッ」と叫び、視線を窓の外に逸した。

「お前……昨日の」

「いや、その、何も見ていません……というか、今日も気がついたらここにいて……えーと、えーと」

 背後で、スプリングの軋む音、衣擦れの音が聞こえる。彼は裸のままベッドに入ったらしい。

「お前、昨夜はいきなり消えたよな。あれ、どうやったんだ? 昼間、城中のメイドの顔を確認したがお前を見つけられなかった。お前は何者だ?」

「わからないんです。来れるのは夜だけだし、いつも気がついたらここにいるんです。普段は――昼間は、別の世界に居ます」

 王子のため息が聞こえた。

「もう振り返ってもいいぞ」

 サナは恐る恐る振り返った。王子はベッドに寝転がっていた。薄いシーツは身体の輪郭を隠しきれておらず、先程見たものを彷彿とさせた。

「俺がそんな戯言を信じるとでも思っているのか?」

「到底、信じられないですよね。正直、私も信じられません。朝になれば、元の世界に戻りますから」

「……おい、もっとそばに来い」

 サナは「なんですか?」と王子に近づいた。すると、王子は素早くサナの腕を掴むと、ベッドの中に引きずり込んだ。

「お前の戯言が本当かどうか確かめてやる。朝まで抱いていれば、本当かどうかわかるだろう」

「あ、朝まで抱く……!?」

 サナの頬が紅潮し、耳までもが紅色に染まる。王子が「そういっただろ」と耳元でつぶやいた。胸の音が早鐘のように鳴り、煩くて仕方がない。

(これは、ただの夢だから……楽しむのもアリ……なのかな)

 王子に力強く抱きしめられている。心臓がバクバクしすぎて、気分が悪くなってきた。しかし、いくら待っても王子はそれ以上、何もしてこなかった。やがて、彼の寝息が聞こえてきた。サナは少しがっかりしたが、自分も眠ることにした。

 やはり、目覚めたのは自室だった。

 それからというもの、サナは夜眠るのが楽しみになっていた。朝まで抱いて眠ったはずのサナが、いつの間にか腕の中から消えていたことで、王子は彼女の話を信じることにしたらしい。

 王子は、孤独な人だった。第一王子でありながら、妾腹であったことから、貴族連中から嫌われているのだという。母もとうに亡くなり、父である王は長く病床に伏しており、義母である王妃が城を仕切っている。そのせいで、城内にも味方が居ない。王妃は実子である第二王子を王にするために、第一王子の命を狙っている。だから、はじめはサナのことを王妃が送り込んだ暗殺者だと思ったのだという。

「まあ、あんな間抜けな暗殺者はいないよな」

 王子は楽しげにけらけらと笑っている。部屋を出ようとしたのに、誤ってバスルームを開けたときのことを思い出すと恥ずかしくなる。

「なあ、今日も抱いたまま眠ってもいいか?」

「別にいいですけど……」

 サナは王子の横に寝転がった。いつもなら、すぐに彼がサナを抱き寄せるのだが、今夜は違った。サナの衣服のボタンを次々に外していく。

「な、何を……」

「……良いだろ?」

 王子はそう言って、サナに口付けた。触れるだけの短いそれ。サナは頬を赤らめながら、頷いた。王子はサナの衣服をすべて取り去ると、体中にキスを降らせながら、ふっくらした胸に優しく触れた。

「んん……」

 色づく先端が、膨張して硬さを帯びていく。王子はそれを指の腹で軽く撫でた。それだけで、サナの口から甘い悲鳴が上がる。親指と人差し指で軽くつまみ上げられると、サナは身体を少し反らせた。

「っん、はっ……はっ、は……ぁあ」

 王子は片方を舌で転がしながら、もう片方を指で愛撫し続ける。それを何度も繰り返す。サナは下腹部が切なくなり、「もう挿れて……」と頼んだが、王子は鼻で笑うだけで愛撫をやめない。

「っん、は……ん……はぁう……ん……」

 王子が胸への愛撫をやめるころ、サナの全身は微かに紅色に染まり、汗が滲んでいた。肩で息をしながら、蜜壺からは愛液がとろとろと流れ出ている。

「それは駄目……!」

 王子はサナの脚と脚の間に顔を埋めた。熱く濡れた舌先が赤く膨らんだ肉芽に触れた。サナの腰がびくんと跳ねる。ちろちろと舌先で触れられた後は、舌全体で舐め上げられた。サナの頭はすでに真っ白だった。吸い付かれると、サナは色っぽい悲鳴をあげた。甘噛みされると同時に、サナは達した。足の指先までがぴんと伸び切り、全身が痙攣する。快感から、涙がこぼれた。それでも彼は続けた。肉芽を吸い上げられ、甘噛みされる。それを繰り返され、サナは何度も達した。

「はっ、ぁああっ……ん~~! ああ゛っ……ぁあああ゛っ! うう……」

 サナがぐったりして身体をびくびくさせ始めた頃、ようやく王子は顔をあげた。

「挿れるぞ」

 膨張した雄が、サナの中に入ってきた。血管の浮き上がる太くて逞しいそれが、サナの中を押し広げながら、より深いところへ入っていく。サナは内側の圧迫感に息を荒らげる。愛液で満たされた中は、肉棒を簡単に受け入れ、あっという間に最奥に到達した。ゆっくりと、王子が腰を動かし始めた。

「んん……あん……ん、はっ……ぁああっ、ん~~!」

 敏感になった身体は、数回突き上げられたのみで簡単に達してしまう。絶頂と共に、サナの中がきゅっと肉棒を締め上げた。サナの身体の中の肉は、雄に絡みついて離そうとしない。

「……おい、締めるな……」

「ああ゛っ……ぁあああ゛っ! そんなの……うう……」

 最奥まで突き上げられるたびに、サナは小さな悲鳴を上げ、身体を震わせながら、きゅっと肉棒を締め上げる。王子も限界が来たのか、びくんと肉棒を震わせたかと思うと、サナの中に大量の精液を吐き出した。注ぎ込まれる熱い液体は蜜壺をあっと言う間に満たし、収まりきらなかった分は結合部から溢れ出した。

「ごめん、まだ出る……」

 サナの中はすでにいっぱいだったが、さらにもう一度出されるのを感じた。出し切ったのか、王子が肉棒を引き抜いた。それと同時に、白濁とした液体が大量に蜜壺から溢れ出した。

「んん……あん……ん、はっ……」

 サナの蜜壺からは、まだとろとろと精液が流れ出ていた。

 サナは、毎夜、王子に会えるのが楽しみだった。しかし、そのうちあることを望むようになってしまった。

 ――彼と同じ世界に住みたい。

 アンティークショップの店員なら、なにか方法を知っているかもしれない。そう思い、彼を訪ねた。

「王子とずっと同じ世界へ? 簡単ですよ」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、簡単です。でも良いんですか? 王子の世界に行けば彼と永遠に居られますが、もう二度とこちらの世界には戻れません。行くのは容易いですが、戻ることはできないんです」

 サナは深呼吸をしてから、店員にどうしたいかを伝えた。

「私は――」