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星に願いを(NL/異星人)

「こちら、エンジェル号。作戦№85-N-00124の途中、船が故障してしまいました。自動操縦モードに切り替えられず、マニュアルモードも試しましたが、駄目で――」

『ザー……ザザー……マニュアルモードは試しましたか?』

「ええ、それはもう――」

『ザー、ザザザ……エンジェル号、聞こえ……ザー……』

 耳障りなノイズ音。しかし、それもすぐに完全に聞こえなくなり、モニタには「通信可能電波なし」と表示された。サナは小さく「……クソ」と呟く。窓の外には、果てしない宇宙が広がっている。どこまでも続く黒い空間に、散りばめられた星たちが美しく輝いている。

「エンジェル、あと何時間で空気がなくなる? それから、食料の残りも教えて」

『はい、サナ。私の予測では、今からおよそ183時間後に生命維持活動を行うのに必要な酸素が不足する見込みです。食料は、通常の食事量で換算すると、2食分。飲料水は残り2リットルです』

 サナはため息を吐いた。

「何とかしないと……」

 目的地には、コールドスリープ中に到着するはずだった。そのため、余分な食料も空気もこの船には積まれていない。

 簡単な作戦で、いつもの移動だったはずなのだ。サナはこの仕事を始めてからもう5年になるが、こんなことは初めてだった。船での移動自体は数百回と経験してきたことだが、目的地に着く前に起こされるのは初めてだった。

「絶対に何か理由があるはず……エンジェル、もう一度――」

 その時、ぐらりと大きく船体が揺れた。サナはバランスを崩し、金属製の床に尻もちをついてしまった。痛みに小さな悲鳴を上げる。

「もしかして……」

 嫌な予感がする。サナは一度ゆっくりと深呼吸をしてから、エンジェル号に搭載されたAIに声をかけた。

「エンジェル、もしかして……自動操縦中に、船体に何かぶつかった?」

『はい、サナ。別の船らしきものが衝突してきました。その船をスキャンし、調べましたが、未登録の船であり、未知のテクノロジーが使用されていました』

「それって……異星人の船じゃないの?」

 AIは抑揚のない声で『わかりません』と答えた。こいつに期待するだけ無駄なのだ。最新の船に搭載されているAIであれば、人間レベルの知能を有しており、自分で考えて学習し、臨機応変にクルーのサポートを行う。しかし、エンジェル号はとても古い船で、搭載されているAIも初期の開発段階のものだ。そんなAIがまともにできるのは、決まった業務のサポートのみ。今回のような不測の事態は、クルーがAIから情報を聞き出さないといけない。企業がWebサイトに設置しているチャットボットより劣る。

「その船から、誰かこっちに移ってきてないよね?」

『いいえ、人間の男性に似た生命体が本船に乗り込んできました』

 サナは慌ててレーザーガンを探した。

「エンジェル、銃は!?」

『乗り込んできた生命体が破壊しました』

 サナはモニタを操作すると、叫んだ。

「こちらエンジェル号、コード・パープルです! 異星人に侵入されました。非常に高い知能を持ち……ああ、救援を……今すぐ……!」

 しかし、スピーカーから聞こえてくるのは耳障りなあのノイズ音のみ。サナは膝から崩れ落ちた。お終いだ。良くて殺され、最悪の場合、攫われて人体実験をされるに違いない。

「はじめまして……」

 サナが勢いよく振り返ると、異星人の男が立っていた。人間にとても近い見た目をしているが、独特な瞳をしている。瞳孔が星の形をしていて、それがゆっくりと回転している。艷やかな銀色の髪は、風でも吹いているかのように不自然に揺れている。マニャ人、第89惑星人、アデ地球人……この特徴の異星人はどこの星のものだったか。思い出さなくては非常にまずい。友好的かどうかもわからない。どんな攻撃をしてくるかも……。

「あ、あれ……宇宙公用語を知らないのかな……」

 異星人が流暢な宇宙公用語を話していることに、サナは安心した。つまり、宇宙平和連盟の同盟星の異星人だ。地球人も全員が宇宙公用語を話せるわけではないが、宇宙公用語検定1級は宇宙運搬ギルドに入るために必要な資格だ。サナも当然、持っている。

「はじめまして」

 サナが宇宙公用語で返すと、異星人は眩しいほどの笑顔を浮かべた。

「やった! あ。……す、すみません。つい。俺、異星人と話すの初めてで……」

 サナは「私もです」と返した。異星人は呑気に「あ、写真を撮ってもいいですか?」と笑っている。

「そんなことより……どうして、この船にぶつかってきたの? おかげで船は壊れちゃった。本部とも通信ができないし――」

「すみません! ぶつけるつもりはなかったんです!! ただ、俺……運転、したことなくて。その上、家族にも使用人にも内緒で宇宙に来ちゃったし……」

 典型的な異星人のお坊ちゃんだということか。

「一応聞くけど、宇宙貴族ではないのよね?」

「……えっと、宇宙貴族ですが……」

 サナはため息を吐いてから、「あなたの船は動く? 家まで送るわ」と彼の肩をポンポンと叩いた。

 異星人の船に移った後、彼はサナに尋ねた。

「俺が宇宙貴族だと、何かまずいんですか?」

「……宇宙平和連盟の作った決まりを知らないの? 宇宙貴族にけして害を与えてはならない、困っていたら全力で助けること――そんなような内容よ。しかもこれを守らなかったら、家族もろとも処刑」

 説明している間も、サナは宇宙船を操作する手を休めない。

「あの、俺……あなたやあなたのご家族を処刑するつもりは――」

「あなたになくても、宇宙平和連盟や他の星が黙っていないのよ」

「そんな……」

 異星人は申し訳無さそうな表情を浮かべている。

「気にしないで。ところで、自己紹介がまだだったわね。私はサナ。宇宙で運搬業を生業にしているわ。生まれは地球」

「俺は……厶グ、と言います。グラタ星の宇宙貴族で……この前成人を迎えたばかりです。グラタ星では未成年が宇宙に行くことを禁じられています。俺はずっと宇宙に行くのが夢だったのですが、成人しても家族や使用人に許して貰えず……」

 サナは「そりゃあ、許されないでしょうね。宇宙貴族のご子息だもの」と呟いた。宇宙には強力なホールがいくつもあり、それに吸い込まれれば一巻の終わりだ。宇宙平和連盟の決まりがあるとはいえ、未だに宇宙には海賊がいる。誘拐される心配だってあるし、最悪……。しかしそれは、宇宙をわかっていない人間にとっての危険であって、運搬業を生業としているサナには危険でもなんでもない。彼女は宇宙を知り尽くしている。

「……わかった。燃料はかなりあるし、このまままっすぐお家に帰ってもつまらないものね。で? どこへ行きたかったの?」

 ムグは「良いんですかぁ?!」と満面の笑みを浮かべながらサナに抱きついてきた。力強く抱きしめられて、身体が軋む。

「折れる折れる折れる。わかったから、離して」

 厶グは残念そうにサナを離すと、行きたい場所を次々と挙げていった。全て行くのは無理だが、現在地から近い場所、帰り道の途中で寄れそうな場所をムグに伝えると、彼は「夢みたいだ」と呟いた。

 二人はムグの行きたい場所(の一部)をめぐり、一週間後、ようやくグラタ星に船をおろした。ムグの家の専用ポートに船を泊めると、屋敷から使用人たちがわらわらと出てきた。

「しっかり説明しなさいよ。じゃなきゃ……私、撃たれるわ」

「もちろんです。あなたを撃たせるわけにはいきません。俺から降ります」

 ムグが船を降りると、サナは運搬ギルドの本部と通信を繋げた。

『こちら本部。宇宙貴族は無事グラタ星に到着しましたか?』

 この一週間、ムグが眠っている間に、本部とは何度も連絡をとっていた。サナの考えと同様、本部も宇宙貴族を家に送り届けるのを優先すべきだと言った。可哀想なエンジェル号は本部が回収し、中の積み荷は予定よりやや遅れて依頼主のもとに届けられた。

「ええ、今、彼の家のポートに船を泊めています。乗っている船は宇宙貴族のものなので、私自身の回収を要請します」

『要請を認めます。迎えの船が、今から地球時間30分でそちらに到着します。お疲れ様でした』

 ブツッと通信が切れた。さて、ムグはこの間に家の連中に事の次第を説明してくれただろうか。船の窓から外の様子を窺う。外では、大勢の使用人とムグ、彼の両親らしき人物が何やら話している。

「ややこしいことにならないといいけど」

 サナは腕につけている運搬用ギルドから支給されたPCを起動し、バーチャルモニターに映りだされたメールをチェックする。随分溜まってしまっている。大半がサナにはあまり関係のないことだが、目を通しておかなくてはいけない。未読メールを読み終えると、軽快な電子音とともに『本部から新着メッセージを受信しました』と表示された。

「なんだろう」

 すぐにメールを開封する。

親愛なる運搬ギルドのメンバー サナ・ウルシマ

この度、貴殿のグラタ星の永住申請が、宇宙平和連盟によって許可されたことを通知します。
この申請の許可により、貴殿の雇用契約が更新されます。更新内容は別途ご連絡します。
ボンボヤージュ! 宇宙運搬ギルド本部

 サナは自身の目を疑った。見に覚えのない永住申請、雇用契約の更新……。

「待って、どういうこと……」

 混乱する頭を整理しようとしていると、宇宙船のドアが乱暴に外から開かれた。ムグの家の使用人らがわらわらと入ってきて、サナをあっという間に取り押さえた。

 ――ムグのヤツ、ちゃんとした説明ができなかったんだ。

 サナがグラタ星の永住権を持っていれば、グラタの法で裁ける。大事な子息を連れ回した運搬屋の女を、どうしても死刑にしたいのか。それよりももっと酷い……。

 使用人がサナの腕を強く掴んでいる。サナは振りほどこうと暴れるが、使用人は腕に込める力を強めて絶対に離さないという意志を示した。

「ちょっと、痛いじゃない!」

 その時、首筋に鋭い痛みが走った。何かを注射されたのだと気がついたときにはもう、サナは気を失っていた。

 次に目を覚ましたときは、柔らかなベッドの中だった。腕のPCは外されていた。ベッドから立ち上がると、周囲を見渡した。ただの寝室に見えた。窓のない寝室。サナはドアに駆け寄り、ノブを回した。――駄目だ、開かない。

 あの注射のせいか、頭がぐわんぐわんする。サナはベッドに腰をかけると、深く息を吸って、吐いた。
「よし、整理しよう。私は宇宙貴族の子息、ムグを家まで送った。その後は、ちょっとした誤解があって、私は捕らえられた。つまり、ここはムグの家。だから……安全のはず」

 殺したければ、とっくにやっているはずなのだ。拷問してから殺したいのであれば話は別だが。

 その時、ドアの鍵を開ける音が聞こえた。サナはすかさず武器になるようなもの――すぐそばに置いてあったスタンドライトを手に持った。ドアがゆっくりと開き、ムグが姿を現した。

「な……!? どうしたんですか? ライトなんか持って……」

「あ……ムグ……」

 サナはゆっくりとライトを元の位置に戻した。

「先程はうちの使用人が失礼しました。両親への説明も済みました」

 サナは胸をなでおろした。

「よかった。じゃあ、永住申請も取り消しね。本当によかった。そうだ、もうすぐギルドが出してくれた迎えが来るはずなの。ねえ、私の腕についていたPC知らない?」

「……」

 ムグは無言で、ドアの鍵を閉めた。

「……ムグ?」

「ですから、説明は済んだんです。あなたを俺の妻にする。これはもう決定事項です」

「何を言っているの?」

 サナは戸惑いを隠せずにいた。彼の言っている意味がさっぱりわからないのである。ムグがゆっくりと近づいてきて、サナの華奢な女体をベッドに押し倒した。強い力で押さえつけられて、唇を強引に奪われる。抵抗しようと首を横に振ろうとするが、ムグの腕がそれを阻む。強引に唇を開かれ、荒々しく舌が突き挿れられる。口内を犯されながら、サナはなんとか状況を理解しようとしていた。舌を噛むことはできない。相手は宇宙貴族なのだ。好きにさせなくてはいけない。ムグから漏れる甘い吐息、水音、荒い息遣い……。

 どれくらい口吻られていただろうか。ようやくムグがサナの唇を開放した。二人をキラキラと光る銀色の糸が繋ぐ。

「……ムグ、やめて」

「どうしてですか。俺は、あなたも同じ気持ちで居てれくれていると思っていたのに……」

 好きになる要素が見当たらなかった。コールドスリープ中に船が壊れるほどの速度で衝突してきた異星人。おんぼろエンジェル号が爆発しなかったのは奇跡だ。宇宙貴族でなかったら、(銃が壊されていなければ)何発か撃ってから宇宙空間に投げ捨てていた。この対処法は、ギルドのマニュアルにも書いてある。

「一緒に旅したじゃないですか。楽しかったじゃないですか。そして、あなたは……サナさんはずっと美しく、かっこよかった。グラタの船は運転したことがないと言いながら、いとも簡単に乗り回す。途中で出会った海賊を追い払ったときも……」

「楽しかったかどうかはともかく、一緒に旅をしたのはあなたを家に帰すためよ。そのために、ちょっとだけ寄り道をしたけど――でも、それだけよ。それに、運転も海賊を蹴散らすのも、運搬ギルドの人間なら誰だってできるわ」

 運搬ギルドの人間が誰でも戦闘に慣れていて、どんな船でも運転できるというのは大嘘だが、このお坊ちゃんの勘違いによる恋心の炎を消すには多少の嘘も仕方がない。

「嘘ですよ」

 ムグは低い声でこちらをにらみながらそういった。そして「だって、他の運搬ギルドの奴はできなかった」と続けた。サナの背筋を嫌な汗が流れる。

「……もしかして、わざと船をぶつけたの?」

「そうですよ。それに、家出は初めてじゃありませんでした。パニックを起こしていきなり撃ってくるヤツ、一緒に旅をすることにしたけどグラタの船をろくに運転できないヤツ……そういうヤツがほとんどでした。ああ、そういう連中は見ているだけでイライラしちゃって、捻り殺してしまいました」

 ムグがサナの唇に一瞬触れるだけのキスを数回降らせる。

「どうして……ギルドに恨みでもあるの?」

「まさか。あなたを探していたんですよ。俺も嘘を吐きましたが、あなたも嘘を吐いていましたよね。異星人と話すのも、グラタの船を運転するのも初めてじゃないでしょう」

 サナはムグから視線を逸して唇を噛んだ。異星人とはまともに話したことがない――ただ一度を除いて。あれはサナがギルドに入る前、海賊をしていたころの話だ。当時のボスがグラタ星の宇宙貴族の親子を船ごと拐ってきた。母子は旅行中で、わずかな使用人しか連れておらず、まともな武器すら船に積んでいなかった。彼らはほとんど抵抗しなかったが、ボスは面白がって使用人を毎日一人ずつ拷問してから殺した。サナには、それが許せなかった。貧しい生まれで、とにかく金が必要だったサナは、海賊になる以外の道がなかった。けれど、これは許せなかった。真夜中、母子が乗っていた船で、彼らと逃げた。そのとき、母親の方から操縦方法を教えてもらった。息子の方は――ここ数日の出来事のせいか、口も利けなくなっていた。

「サナさんは――あの海賊共から救ってくれました。あの日から、俺はあなたをずっと探していたんですよ。しばらくは海賊の船を襲っていました。でも、あなたを見つけることはできなかった」

 ムグが優しく、ゆっくりとした動きでサナの胸を揉む。弾力のある乳房。その頂点にはけして触れない、意地の悪い触り方。

「あるとき、気がついたんです。あれだけ正義感の強い人だ。いつまでも海賊なんかやっていないんじゃないかって。ねえ、どうして、あなたみたいな人が海賊なんてやっていたんです?」

「……」

 ムグがサナの乳房の先端を口に含んだ。口の中で優しく舐める。舌先でしばらく転がした後、軽く噛んだ。

「……ッ!」

「ねえ、教えてくださいよ」

「……。私が生まれたのは地球。あの星が、どんなところかは知っているでしょう。貧富の差が激しくて、貧乏人には地獄みたいな星よ。毎日ごみを売って、ごみを食べて生きていた。そんな時に、海賊からスカウトされたの。私には病気の妹がいた。お金が必要だったのよ……」

 ムグはサナの胸に顔を埋めた。熱い吐息が、肌にあたる。

「妹さんは助かりましたか?」

「助かったわ。今じゃ元気になって、アデ地球人と結婚して、アデで暮らしてるわ。でも、妹のために使ったのは、海賊の汚い金じゃない。……あなたたちをグラタ星に送ったあと、あなたのお母さまからもらった船は、例の海賊に撃ち落とされた。でも、運搬ギルドの人間に助けてもらえて、私はギルドに入れた。その後、ギルドで稼いだお金で妹を助けられたの」

「それはよかった」

 ムグは顔をあげると、再びサナと唇を重ねた。甘い吐息を漏らしながら、何度も何度も口内を蹂躙される。

「……はっ……ねえ、サナさん。運搬ギルドなんてやめてくださいよ。もうお金は必要ないんでしょう。俺の奥さんになって、ずっとここで暮らしましょう」

「……嫌よ。私は……宇宙が好きなの。それに、ギルドへの恩もある」

「あなたが俺との結婚を嫌がる方が、ギルドにとっては大きなマイナスだと思いますけどね。簡単なことですよ。連絡を一本入れるだけです。宇宙ギルドの所有する船が整備不良で不具合を起こし、俺の乗っている船に衝突……」

 サナはムグの口を両手で塞いだ。この男は、世間知らずのお坊ちゃんではない。あのおんぼろエンジェル号が、現在の宇宙船法に触れていることも見抜いている。

「わかった。わかったから……」

 ムグは自分の口を塞ぐサナの手を愛おし気に撫でながら、「分かってもらえてよかったです」と微笑んだ。ムグはサナの秘所にそっと触れた。そこはわずかに濡れていた。

「もう少し濡らさないと、お辛いでしょうね。でも、安心してくださいね。俺がしっかり、濡らして差し上げますから」

 ムグはサナの脚と脚の間に顔を埋め、ちろちろと爬虫類のように舌を細かく動かし、舌先で敏感な部分を責め続けた。

「ぉあ……うう……あっ……」

 サナの唇から甘く切なげな声が漏れる。秘所はひくつきながら、とろとろと愛液を零す。女が一人で宇宙を旅していれば、身体を差し出さなきゃいけないことくらい何度もあった。だから、これくらい何ともない。異星人に抱かれるくらい、いまさら何だと言うのか。それに、ムグはこれまで出会ったどんな男よりも丁寧にしてくれている。これが終わったら、ムグの両親に、自分が彼には不釣り合いであることを伝えよう。そしてまた、宇宙で運搬業を生業にする。すべて元通り。今度こそ、グラタ星人とは二度と関わらない。

「何を考えているんですか? 集中しないなら、酷いですよ」

 ムグの二本の指が割れ目を開き、さらにその奥へと挿し込まれる。熱い粘液が潤滑油となり、彼の指は二本ともすっぽりと入ってしまった。卑猥な水音を立てながら、中を指先で優しく撫でられる。

「あっ、はぁ……はぁ……ん、あ……」

 蜜壺の入り口が、サナの身体が僅かに震えている。掻き出された愛液がシーツをぐっしょりと濡らしていた。指の動きはだんだんと速くなってきて、サナは耐えきれず嬌声をあげながら、データでしか見たことのないかつて地球にいた海老という生き物のように身体を反らせた。潮を吹きながら絶頂する彼女の秘所を責める手はけして緩められない。

「ああ゛っ……」

 びしゃびしゃとまき散らされる液体。サナは恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。

「集中してくれないからいけないんですよ。今日はまだ、変なことはしないつもりだったのに」

 ムグは指を引き抜くと、まだ痙攣しているところに己をゆっくりと挿入した。

「あん……あっ、ぁあああ゛っ!」

 愛撫され続けたサナの身体はすでにおかしくなっていた。挿入されただけで、絶頂し、肉壁はきゅっと締まる。そのせいで、目で見なくても彼の形がはっきりとわかった。ムグはゆるゆると動き始めた。肌は汗ばみ、桜色に染まっている。いつしか助けを求めるかのように彼の背中にしがみついていた。お互いの呼吸は荒く、サナの目には快感のせいで涙が浮かぶ。

 何度も何度も奥深くまで突き挿され、頭は真っ白になっていく。何も考えられない。もうどうなってもいい。滅茶苦茶にしてほしい。

「ああ゛っ……あーーーーっ! ああ゛っ……イクイク……ん~~! ぁああっ、ムグ!」

 一定のリズムで突き上げられ続けながら、サナは時折身体を痙攣させた。

「あんまり締めないでください……」

 その後、続けてムグが何やら言ったが、それはグラタの言葉で、サナには何を言っているのかわからなかった。

「はぁっ……ぁあああ……はぁっ……ん゛っ……ああ゛っ……」

 ぐりぐりと肉棒で中を擦られるたびに、快感の波が押し寄せる。大量の体液が流れ出ているせいか、嬌声をあげすぎたせいかは分からないが、サナの声は掠れ始めていた。

 ムグはというと、彼も彼で限界だった。サナが絶頂のたびにきゅっと中を締め上げるせいで、これ以上我慢できないというところまで来ていた。歯を食いしばって耐えていたものの、とうとう我慢できずに熱を吐き出した。大量の白濁とした液体がサナの中に注ぎ込まれる。ムグは繋がったまま、サナにキスをした。

「夢みたいです」

「……」

 サナは僅かな罪悪感を隠すように、彼に向かって優しく微笑んだ。

 翌日、サナはムグの両親と3人で話をした。自分は元々海賊で宇宙貴族の嫁には相応しくないこと、処女など地球にいるうちに散らしてしまっていること、ご子息は憧れに似た感情を恋心と誤解しているらしいということ……。

 黙ってサナの話を聞いていたムグの母親が、サナの手を取った。

「もしかして、息子とは結婚しないというつもり? あなた、海賊どものもとから共に逃げ、グラタ星に着いたときのことを忘れたの?」

「……」

 忘れもしない。ショックからか、一言も発せなくなっていた少年――ムグ。あの時、グラタ星から一人で飛び立つというサナの脚にしがみついて泣きながら言った。

 ――行かないで。どうしても行くと言うのなら、絶対に帰ってくると約束して。

「あれから長いこと――あなたはほとんどの時をコールドスリープで過ごしたわけですから、実感はないかもしれないけれど――あの子は待っていたのよ。ずっとね」

 サナは唇をぎゅっと噛んだ。彼の母親は、サナを帰すつもりはないらしい。

「……」

「わかったかしら? ああ、明後日の結婚式は楽しみね」

 笑いながら母親が去った後、父親がサナに小さな袋を無言で渡してきた。受け取ったそれの中には、没収されたPCと宇宙船の鍵が入っていた。

「これは……」

「君みたいな強い女性が息子の嫁になってくれたら……とは思うよ。だが、私はかけがえのない存在である妻と息子を救ってもらった。本当に出ていくなら、今日中にしなさい。明日はもっと警備が厳しくなる」

 そう言って彼の父親は去っていった。