サナは、勇者パーティーに属している。戦闘では回復魔法をメインに使い、仲間たちの傷を癒やす。そして、夜は勇者を別の意味で癒やしていた。
サナが宿屋でお風呂に入っていると、裸の勇者が入ってきた。
「わ……勇者様!?」
「ごめん、待ちきれなくてさ。咥えてくれる?」
サナは湯からあがると、勇者の前で跪き、すでに大きくなりつつある肉棒を手で撫でた。サナの小さな手の中で段々と大きくなっていく肉棒。サナは根本から先端に向かって舐めあげる。サナの舌の柔らかさに感じ、勇者はうめき声を漏らす。口を大きく開け、雄の部分を咥える。サナが頭を動かし始めると、淫靡な水音が立つ。喉の奥まで使って勇者を悦ばせることに集中する。
「すごいよ……もう出ちゃう……」
大量の精液が、サナの口内にぶちまけられる。サナはそれをすべて飲んだ。一滴も取りこぼさないように、肉棒から精液を吸い出す。やや柔らかくなったはずの肉棒が、再び硬くなり始める。サナは管に残った精液をすべて吸い出してしまうと、ようやく肉棒を開放した。
「次は……」
「はい、わかっています」
サナはバスタブに手をついて、勇者に向けて尻を突き出した。
「どうぞ……挿れてください」
勇者はため息を吐いた。
「駄目だなぁ。ちゃんと、何ていうか教えたよね」
「あ……ごめんなさい。勇者様のおちんぽを、サナのおまんこに挿れてください」
「どうしようかなぁ……」
そう言いながら、勇者はサナの蜜壺に指を挿れた。中の肉を指の腹で擦る。
「ぁあ、ぁう……勇者、さまぁ……はぁ……ぁああっ、んん……」
「俺のちんぽを咥えただけで、ぐちょぐちょになっちゃうだらしない淫乱おまんこ……見てよ、ほら。こんなに濡れちゃってさ。どうしてこうなっちゃったの?」
「こ、このあと……はぁっ……ん、勇者様のおちんぽで、あん、んん……おまんこを……はっ、ぁああっ、めちゃめちゃ、にッ……ぁああッしてもらうのを……んん……想像したらあっ、あん……」
「そっか。かわいそうに。つらそうだ。お望み通り、挿れてあげるよ」
膨張した逞しい肉棒が、サナの蜜壺の入り口にあてられた。エラの張ったかり首がぐっと挿入されると、残りはすんなりと入ってしまった。
「あん……ぁああっ、すご……ッ、おちんぽが……うう……もう奥にあたって……ん、あっ、あ゛っ!」
「すごいよ、サナ。本当にすごいおまんこだ。中の柔らかいひだが絡みついてくるよ。吸い付いて離さない……俺の精液を全部絞りとるつもりだね?」
サナの腰をしっかりと掴み、深く突き上げる。宿屋の狭い浴槽に、肉のはじける音と、卑猥な水音、サナの嬌声が響く。
「は……ん、勇者様のッ、ああっん、精液は……ああっ全部、んん……サナの……イクッ……ぁあああ゛っ!」
サナの身体がぶるっと震え、中がきゅっと締まった。
「イクたびにおまんこ締め上げちゃうサナは、どうしようもない変態さんだね。そんなに俺の精液がほしいの?」
「ん、ぁああっ、はっ、はい……ッ! な、中に……あっ、イク……中にいっぱい……はっ、出してくださいッ!」
もうすぐ射精するのだろう。勇者の動きが速くなっていく。サナは獣のように叫び、バスタブにしがみつく。快感に身体を乗っ取られ、もう何も考えられない。サナの中に白濁とした欲望を吐き出すとき、勇者がなにか言ったが、絶頂し甘い悲鳴をあげる彼女には聞こえていなかった。
(魔王を倒したら、勇者様との旅は終わり……)
騎士は城へ帰り、元の仕事に戻るだろう。魔法使いは、自分の国へ帰るだろう。サナも、故郷の村へ帰り、昔のように師匠のもとで修行をするつもりだ。勇者は、お姫様と結婚して、幸せに暮らすだろう。サナとは、何もなかったかのように。
「不安そうだな。魔王が怖いか? 俺達なら平気だ。いつも通り俺達の後ろにいろ。回復を頼む」
勇者の言葉に、サナはこくりと頷いた。
(魔王は怖くない。私達は強くなりすぎた。絶対に、あっという間に魔王を倒してしまう。私が一番怖いのは……)
勇者の方をちらりと見ると、彼は「俺がいるから大丈夫だ」と微笑んだ。
(でも、ずっと居てくれるわけじゃないでしょう……)
「ついに魔王を倒したぞ! やったぜ!」
完全に酔っ払った魔法使いがはしゃいでいる。一方、サナは暗い気持ちだった。
(魔王を倒した。これで全部、終わり……)
「なんだよ、サナ! 浮かない顔してんな」
魔法使いがサナの肩に腕を回した。どれだけ飲んだのだろう。ずいぶん酒臭い。
「別に……あんたには関係ないでしょ」
「そういや、お前も故郷に帰るんだっけ? そうだ、俺と一緒に来たらどうだ? この国の魔法も悪くないが、やっぱり本場で学んだほうが良いぞ!」
サナは「絶対嫌」と即答しようとしたが、ふと、この国に残った自分のことを想像してしまった。朝、ポストに投げ込まれた新聞を広げると、勇者とお姫様が湖に遊び行ったとか、パーティーを開いたとか。日々のちょっとしたことでもいちいちニュースになって、サナの目に入る。そのうち、お姫様が懐妊されたという記事も見る羽目になるだろう。国外なら、二人を見る回数は格段に減るのではないか。
「……それ、いいかも」
「だろー? 俺の家、でっっかいから泊めてやるよ! 春になったら夜に鳴く花を見に連れて行ってやるよ。それから、夏は――」
大はしゃぎで話続ける魔法使い。そんな彼を、騎士が首根っこを掴んで、少し離れたところに投げた。
「平気か?」
「うん。あいつはいつもああだもん。平気平気」
騎士はサナのすぐ横に腰をおろしながら「ところで――本当に故郷に帰るのか?」と問いかけてきた。
「どうして? 考え中だよ」
「その……城で働いたらどうだ? 金もいいし、紹介してやるぞ」
「絶対嫌」
何が悲しくて、勇者とお姫様の暮らす城で働かなきゃいけないのか。「ふざけたことを抜かすなよ」と怒鳴りつけて、殴り飛ばしてやりたい気持ちをぐっと堪える。
騎士は騎士で、サナが「絶対嫌」と答えたのがよほどショックだったのか、指をぷるぷると震わせている。
「ち、ちなみに理由を聞いてもいいか?」
「は? ……嫌なものは嫌なだけ」
この馬車には当然、勇者も乗っている。先程から眠っているようだが、いつ起きてもおかしくない。下手なことは言いたくない。自分の気持ちは伝えないまま、彼の前から消えたい。
(だって、伝えたところでどうなるの? 選ばれるのはお姫様に決まっている)
「じゃ、じゃあ……俺の嫁になるのは?」
予想外の騎士の言葉にサナは目を丸くした。確かに、お互い結婚していてもおかしくない年齢だ。短くない期間、共に旅をした。お互い、それなりに知っている。結婚相手としては悪くない。
「それは嫌じゃない」
騎士は頬を赤らめると「本当か!?」とサナの手を取った。彼女はその手を乱暴に振り払った。
「ちょっと、いきなり何? 嫌じゃないって言っただけでしょう。結婚するなんて一言も言っていないよ」
騎士は気まずそうに「そうか、そうだな」とつぶやいた。
その後、勇者一行は城に着くまで言葉を交わすことはなかった。
国王が勇者を称える文を読み上げている中、サナは彼をちらりと見た。勇者は、目を瞑って静かに国王の言葉に耳を傾けている。サナは彼との出会いを思い出していた。
森の中で、師匠がモンスターに攫われた、あの日。モンスターが恐ろしくて、師匠を助けに行けなかった。サナは、偶然、村を訪れていた勇者に師匠を助けてほしいと頼んだ。彼は、どんなモンスターかも聞かずに、すぐに師匠を助けに行ってくれた。たった一人で。その時、思った。身も心も彼のように強くなりたいと。彼は目標だった。それがいつ、愛する相手になってしまったのか。
「誠にご苦労であった。勇者よ、我が娘をそちの花嫁にするがいい」
サナの鼓動がどんどん早くなっていく。ついにこのときが来てしまった。「具合が悪いので先に帰ります」と言って、ここを去ろうかとさえ思う。具合が悪いのは事実だ。
「恐れながら、私にはもう心に決めたひとが居ますので、丁重にお断りさせていただきます」
勇者の言葉に国王は「そうか」と答えただけだった。国王との謁見が終わった後も、サナの脈は正常に戻らなかった。ずっと胸がバクバクしている。一人になりたくて、王都の公園に来てみたが、どうにも落ち着かない。ベンチに腰掛けて、噴水を見つめ、心を静めようとしたが無駄だった。
(旅を始める前から、心に決めた相手がいた……ってこと?)
勇者の故郷で、彼の帰りを健気に待つ女を想像すると、涙がでてきた。自分とのことははじめから遊びだとわかっていた。
(こんな国、出ていこう)
風の噂でも、勇者の話は聞きたくない。それに、この国には勇者との思い出が多すぎる。どこへ行っても、彼との思い出でいっぱいだ。
「サナ? 大丈夫?」
勇者が心配そうにサナの顔を覗き込んでくる。最悪だ。今一番会いたくない相手に出会ってしまった。サナは服の袖で乱暴に涙を拭うと「平気……平気です。少し、考え事をしていただけです」と答えた。
「泣いてたの?」
「泣いていませんよ。どうしたんですか?」
サナは無理やり笑顔を浮かべた。勇者はサナの横に腰掛けると、「魔法使い? 騎士? どっちにするの?」と聞いてきた。
「どっちって、なんですか?」
「あの二人のどちらかのことが好きなのかなって。今日、馬車の中で楽しそうに話していたから」
あの二人と楽しそうに話した記憶はないし、どちらも好きではない。自分の気持ちを伝えるつもりはなかったが、今日言わなかったら、一生後悔するような気がした。
「どちらも好きじゃありません。私が好きなのは、勇者様ですから」
勇者の頬が赤く染まっていく。勇者は自分の顔を手で隠したまま「よかったぁ」と言った。
「俺……全然、好きとか……そういう風には見られていないのかもって思ってた。俺の身体は気に入ってくれているみたいだけど……」
「だ、だって、勇者様だってそんな感じじゃなかったでしょう。キスとかしなかったし、好きだとかも言わなかったし」
勇者は大きなため息を吐いた。
「言ってたし、してたよ。誰かさんは喘いでて聞こえていなかったり、夢中で気がついてなかったみたいだけど。騎士も魔法使いも絶対、サナのこと狙っているから、俺、必死でご奉仕したのに」
「じゃあ、心に決めたひとって――」
サナの問いに、勇者は顔を真っ赤にしたまま、答えた。
「君は、好きでもない男とあんなことするの? 俺は、違うんだよ」