ななし様のリクエスト作品です。リクエストありがとうございました!
静寂に包まれる石造りの教会。信心深いサナは、今夜も一人でお祈りに来ていた。ステンドグラス越しに差し込む月明かりが石の床に淡い色彩の影を落とし、数本だけ灯された蝋燭の炎が柔らかく揺れている。
サナは神を模した石像の前に跪き、指を組み、目を閉じている。皆が眠っている時間。まるで、この広い世界で神と自分の二人きりになれたような気がする。
そのとき、正面の最も大きな扉が、きしむ音を立てて開いた。同時に、ふわりと冷たい夜風が教会の中に入ってくる。
誰か来た。
こんな時間に人が来るのは珍しいが、驚くことではない。ここは、すべての人が祈りを捧げて良い場所なのだから。……だが、誰が来たのかは気になる。隣に住むディアンヌかもしれないし、よく話すシスター・エイラかもしれない。サナは薄目を開けて扉のほうを見た。
「……?」
知らない男だった。町で見かけたことのない、年若い男。洗練された衣服を身に纏い、歩き方に妙な品があった。男はサナに気が付くや否や、早歩きで近づいてきた。跪いて祈りを捧げている彼女の腕を掴んで立たせると、そのまま唇を奪った。サナは身を離そうとしたが、彼は彼女の後頭部を片手で抑え、逃がさない。もう一方の手はサナの衣服のボタンを器用に外していく。
「んぐ……ひゃ、やめ……」
口内に舌がねじ込まれ、呼吸を奪うように唇を貪られる。サナは、あっという間に一糸纏わぬ姿にされてしまった。乳房をやや乱暴に揉みしだかれながらも、抵抗を試みる。男は口づけをやめたかと思うと、耳元で甘く囁いた。
「……ねえ、乳首がぷっくりし始めてるけど……感じやすいの?」
「ちが――」
反論の言葉は、深い口づけで封じられてしまった。男の手が、下のほうへ伸ばされる。サナの秘所の周囲を人差し指でなぞり、膨らみ始めている肉の蕾を親指で撫でる。
「ん……ふ、やめ……」
男に舌を絡められているせいで、サナは上手く話せない。口内から、唾液がかき混ぜられ、濡れた舌が触れ合う淫靡な音が立つ。
「……っ!」
ついに、男の指が一本、サナの中に挿し込まれた。内側の壁を指の腹で擦られ、サナは膝を震わせた。それを見て、男は気分を良くしたのか、わずかに口角を上げる。指がさらに一本追加され、第二関節を腹側へ曲げ、感じやすい部分を執拗に刺激し続ける。サナの体がびくんと跳ね、彼女から噴き出した潮が男の掌を濡らし、ぼたぼたと床へ落ちていく。男は唇を離すと、名残惜しそうにもう一度触れるだけのキスをしてから、微笑んで「はぁ……君みたいなコに出会えてよかったよ。死んじゃう前にさ……」と呟いた。
「……え? どういう……」
意味がわからず、サナは聞き返したが、男は「何でもない」と笑って彼女を壁際に押しやるだけだった。
「つ、つめた……」
剝き出しの背中を壁に押し付けられる。石でできた壁はひんやりとしている。体が火照っているせいで余計に冷たく感じられる。男がわずかにズボンを下ろすと、すでに昂っている立派な男根が待っていましたと言わんばかりに飛び出す。太い血管がいくつも走り、わずかにぴくぴくと動いている。先端からは、すでに白っぽい液体がとろりと一筋垂れている。
「そ、そんなの入りません……や、やめ……」
男は微笑みを浮かべたまま、サナの片脚を持ち上げる。肉棒の先から零れる白濁を塗りつけるように、サナの入り口を撫でる。そのたびに、ぬちゅっという水気を含んだ音が立つ。
「……大丈夫、全部入っちゃうと思うよ。だって、すごく濡れてるもん。ほら、聞こえる……? ぐちゅ、ぐちゅって……」
「濡れてなんか……」
サナは言葉では否定したが、男の言う通り、蜜壺からは愛液がとろとろと溢れ出していた。男は己の熱を押し当て直すと、そのままぐっと腰を前に出すようにして、ゆっくりと挿入する。
「んん……ん……ぁあっ……」
あっという間に根元まで体の中に沈められてしまった。快感に震えるサナの耳元で、男は「ほら、入った……っく、中が……吸いついてくる……」と熱い息を漏らしながら囁く。蕩けるような快感が、サナを柔らかく満たしていた。
「うう……もう、やめ……」
「でも、気持ちいい……でしょ?」
律動がだんだん深く、速くなっていく。男が突き上げるたび、サナの口から甘い吐息が漏れる。二人の肌がぶつかるたび、ぱんという音が響く。男は時折角度を変えながら、奥を激しく、深く責め立てる。内壁を肉棒で擦り上げられ、最奥を突かれるサナの身体は、快感のあまりわずかに震えている。
「あっ、ああ……ん、はぁっ……あああっ!!」
サナは少し身体をねじらせて、絶頂を迎えた。同時に、男の肉棒がぎゅっと締め上げられる。
「ん……そんなに締めるな……もう少し、突きたいんだから……」
男の唇がサナの胸に触れる。両方の胸を交互に舐め、吸い、軽く甘噛みしながらも、腰の動きは止めない。むしろ速さを増していく。
「はぁ……最高。信じてもらえないだろうけど……実は、俺、王子なんだよね……」
「あぁっ……な、何を言って……あん、っん……」
「信じられない……? 別にいいよ……ただ、これだけは信じてほしい。俺、もうすぐ……死ぬんだ。有名な医者や魔法使いたちに診てもらったけど……駄目なんだ。どうしても、治らない病気なんだって。だから、死ぬしかないんだよ……。あ、安心してね。うつるようなものじゃないから……」
サナを突き上げながら、悪戯っぽい表情を浮かべたまま、どこか他人事のように話す男の瞳は潤んでいた。それが快感のせいなのか、男の語る身の上話のせいなのか、サナにはわからなかった。
「とにかく、君に会えてよかった……奥に……全部、注がせて……」
「んん……そ、それは……ひゃあっ、あっ……あぁあああっ!」
サナが「だめ」と言えないように、男は腰のスピードと圧を一気に増したかと思うと、最後に腰を深く沈めた。子宮口に肉棒の先を密着させたまま、熱い精液を吐き出す。淫らな水音と共に、サナの内側が白濁で満たされる。男の肉棒がゆっくりと引き抜かれると、サナの秘所からどぷっと精液が零れだした。男は数歩下がると、そのままばたりと倒れてしまった。彼女は慌てて震える脚で男に駆け寄った。
「あはは……ちょっとはしゃぎすぎたかも……」
そういって笑う男の顔は嫌に白い。先ほど男が語ったことは、本当だったのかもしれない。サナは、無言で男を抱き寄せた。
◆ ◆ ◆
少ししてから、男は王家の紋章の入った剣を見せてくれた。本物の王子だったようだ。だが、サナにしてみれば、自分を犯した男が王子だろうが、農民だろうがどうでもよかった。
「俺、ずっと操り人形だったんだよね。決められた本を読んで、決められたことだけ言って、決められた相手と子供を作るはずだった。……なんか、最期に抗いたくなったんだよね。君を巻き込んだのは……謝る。でも……俺、今、幸せなんだよね。生まれて初めて、幸せなんだよ、サナ……」
サナと男は、大きな木の下で、草の上に腰を下ろしていた。時折吹く風が心地よい。まだ臨月ではないというのに、ぱんぱんに膨れ上がったサナの腹部を撫でながら、男は微笑んだ。
「……たぶん、子供の顔は……俺、見れないんだろうなぁ……」
そう呟く男は優し気な微笑みを浮かべていたが、悲しみに満ちていた。なんて勝手な男なのだろう。サナはため息を吐いた。自分自身、この男のことを好きになってしまったかどうかすらわからない。この男を責めるための言葉が頭の中で無数に浮かんでいるのに、ひとつも口にできない。
「ねえ、肩、貸してよ。ちょっとだけ……眠りたいんだ」
サナが良いとも悪いとも言わないうちに、彼は頭を勝手に肩の上に乗せてきた。重みと、男の熱……それから穏やかな寝息。この男には言いたいことが山ほどある。しかし、今は……サナも少しだけ、幸せだと感じているのかもしれない。いつまで一緒にいられるかはわからない。この男を許すべきなのかどうかも……自分がどうしたいのか、わからない。あれこれ考えていると、いつの間にか日が落ち始めていた。
「……じきに暗くなります。起きてください」
サナはそう言いながら、彼の肩を軽く揺すった。返事や反応はない。代わりに、彼の身体がゆっくりと草の上に崩れるように倒れていった。
「……本当に、勝手な人……」
男の表情は穏やかで、幸せそうだった。
◆ ◆ ◆
男が亡くなってから、数か月が経った。サナは、王子の子を身ごもっていることを隠しながら生活していた。誰にも、お腹の子が誰の子か言わないまま……。なんてふしだらな女なのだ、どうせ相手がわからないのだろうと口さがないことを言う者もいた。もっと酷いことを言われることもあった。傷つかないわけではない。辛くないはずがない。だが……その身に宿る命のことを思うと、平気だった。小さな命が体の中で動くたび、愛おしい気持ちでいっぱいになった。
もちろん……サナの事情を深く聞かずとも、彼女の力になってくれる人もいた。シスター・エイラもそのひとりだ。
サナは、かつて王子と出会った教会で深呼吸を繰り返していた。冷たい石の床の上には、柔らかで清潔なブランケットが何重にも敷かれ、サナはその上で脚を開いて仰向けに寝ていた。彼女の額を脂汗が伝う。神の石像が、サナを見守ってくれている。あの王子も……きっと、空の上から見守ってくれている。
シスター・エイラはぎゅっとサナの手を握っていた。
「大丈夫……神も、私も……あなたと共にあります。……さあ、いきんで!」
サナはこくこくと頷くと、痛みに顔を歪めた。
「ああ……頭が見えてきた!」
別のシスターが、産まれてくる赤子を受け取ろうと、布を広げる。ずいぶん前からわかっていたことだが、サナの腹部は、通常の妊婦のそれよりもずっと大きい。おそらく、産まれてくるのは一人ではないだろう。長い夜になりそうだ。
「もう少し! いきんで!」
シスターの声に従い、サナは再度力を込めた。
◆ ◆ ◆
出産が終わった頃、サナも、手伝ってくれたシスターたちも全員疲れ切っていた。ぐったりとしたサナの横では、五人の小さな天使が眠っている。サナは天使たちの小さな手を指先で撫でながら、「まさか、五人もお腹の中にいたとはね……」と呟いた。
シスター・エイラがそれを見て微笑む。
「お疲れ様、サナ。……ところで、どうしてここで産みたいって言ったの? あなたが何かを望むなんて……珍しいじゃない」
「それは……」
サナは唇を軽く噛んだ。自分でも、よくわからなかった。いや、認めたくなかったのかもしれない。
「ここが一番落ち着くから……」
そう言って、サナは誤魔化した。五人とも、王子によく似ている。そのせいで、胸のあたりがぎゅっと苦しくなる。サナには、どうしてそうなるのか、わからなかった。いや、わからないふりをした。