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今だから言うよ(NL/コウモリ男)

 それは、悲しい事故だった。
 あれだけ注意していたのに、誰かが何かを間違えて――それ自体は責められないけれど――研究室は文字通り吹っ飛んだ。中に居たのはモリサキという研究員1名のみ。彼の死体は見つからなかった。けれど、研究室が吹っ飛んだのだ。死体が見つからなくても、誰も不思議には思わなかった。可哀想なモリサキも木っ端微塵になってしまったのだろう。皆、そう考えた。

「ウルシマさん、資料作り、終わりそう?」

 サナが顔をあげると、心配そうな表情を浮かべたボスが居た。

「いえ……でも、明日の朝までには――」

「いいよ。そんなに急ぐ資料じゃない。R9で起こった事故は知っているだろう。研究室に一人で残るのは危険だ。今日はもう帰ろう」

 研究室ごと吹っ飛んだ彼も、一人で残業していた。

「わかりました」

 サナはすぐに荷物をまとめると、研究所を後にした。

 帰り道、ぼんやりとモリサキのことを考えていると、涙が出てきた。彼とは友人だった。二人が勤める研究所では、新人類の創出という倫理的に危うい研究が、秘密裏に行われていた。

 ――完成したと思う。

 研究室が吹っ飛ぶ前に、サナが彼から受け取ったメッセージにはそう書かれていた。彼は結果を出そうと焦っていた。おそらく、彼はそのせいで命を落とした。

「バカね。死んじゃったら、意味ないじゃない――」

 その時、背後に気配を感じた。時刻は夜中の0時を少し過ぎたころ。勇気を出して振り返ってみたが、そこには誰も居ない。

「まただ……」

 モリサキの事故から、一人での帰り道におかしな気配を感じることが増えていた。はじめのうちは、友人の死によって神経質になっているのだろう、仕事で疲れているせいだろうと思っていたが、この気配は何度も何度も続いた。

「ゔぁ……」

 奇妙なうめき声。振り返っても誰も居なかった――そう思っていたが、すぐ足元にボロボロの黒い布団のようなものが落ちていた。うめき声はその布団から聞こえてくる。サナは恐る恐るその布団をめくった。

 ずっしりと重い布団。手で掴んでみてわかった。暗くてよく見えていなかったが、これは布団ではない。生き物の羽だ。そう、蝙蝠の羽のような――。

「何なのよ……」

 それでも、好奇心からその巨大な蝙蝠の羽を離せなかった。さらにゆっくりとめくっていくと、それがやはり巨大な蝙蝠だということがわかった。だが――。

「モリサキくん?」

「うゔゔ……」

 その巨大な蝙蝠の顔は、どことなくモリサキに似ていた。

「モリサキくんよね?!」

 サナの呼びかけに、巨大な蝙蝠は空高く飛び上がった。そして急降下してサナを掴んだかと思うと、再び急上昇した。

「きゃぁあッ」

 浮遊感にサナは悲鳴をあげた。恐怖でぎゅっと目を閉じる。

「目を開けて……」

 モリサキの声だった。研究室が吹っ飛んだ日、何かが起きて、彼は巨大な蝙蝠になってしまったのだろう。サナはゆっくりと目を開いた。いつも見上げているビル群が、足元に見える。街の明かりが、輝く星の絨毯のようだ。

「綺麗……」

 冷たい夜風が、サナの身体を優しく撫でる。大きなゴム布を乱暴に振り回すような羽音がすぐそばで聞こえる。モリサキの方を見る。先ほどはどうして彼だと思ったのだろうか。見れば見るほど、元の姿からは程遠い、巨大な蝙蝠。

「どこまで行くの?」

「……静かなところ」

 モリサキは短く答えた。その声は、やや高音が混ざった不自然なものだった。しばらく飛んだ後、町から少し離れた森……というか山にモリサキはゆっくりと降りた。サナを地面に降ろすと、彼はすぐそばにあった洞窟に素早く身を隠した。洞窟の中は暗く、奥がどうなっているのかは見えない。サナはモリサキを追って、洞窟の中に恐る恐る入った。

「モリサキくん……?」

 サナの声が、洞窟の中で反響する。それにしても真っ暗だ。鼻を摘まれてもわからない、というのはこういうことを言うのだろうと呑気に考えていると、頭上から「ここだよ」と声がした。顔をあげると、大きな蝙蝠――モリサキが洞窟の天井に逆さまになってぶら下がっているのが見えた。彼は手を伸ばし、サナを掴むとそのまま持ち上げた。そして、ゆっくりと口付けた。

「モリサキくん……あの……」

 サナが言葉を発し終える前に、モリサキは掴んでいた彼女をくるんと縦に回した。サナの世界が逆さまになった。髪の毛が地面に向かって伸びている。血が重力に従い、頭に登っていくのがわかる。モリサキは左腕でサナの腹部を抱きしめるようにして身体を支えている。そして右腕で、サナのパンストを引き裂き、下着をずらした。そして、巨大な舌がサナの秘所をぺろんと舐めた。

「っん、ん……」

 真っ赤な唇から、甘い声が漏れる。ぴちゃぴちゃという水音が、洞窟の中で響く。太い舌はサナの膣口を探すような動きをしている。なかなか見つからないのか、時折、肉芽の方を舌でぐりぐりとされる。

「はっ、はぁ……はっ、は……ふ」

 サナの反応を見てか、舌は入り口を探すのをやめて、肉芽を愛撫することに集中しはじめた。粘液をまとった、柔らかくて温かい舌が、肉芽を強く擦る。

「イクイク……ぁあああ……イクッ……あーーーーっ!」

 びちゃびちゃと、サナが絶頂と共に噴き出した潮が地面に落ちる音が響く。サナのあそこがヒクヒクと震えている。暗くてよく見えないが、抱きしめられている感覚から、モリサキが体勢を変えるのがわかった。

(はぁ……蝙蝠とやっちゃうんだ……いったい、どんな……)

 サナは秘所をひくつかせながら、期待に胸を膨らませる。

 ――さて、蝙蝠は身体に対して、非常に大きなペニスを持っている。メスの体内には収まらない。だから……。

 舌とは違う、熱くて硬いものがサナの股に押し当てられた。秘所から腹部にかけて、ぐりぐりと押し付けられるそれ。熱い。この熱さが気持ちいい。肉芽が先程よりもずっと強く、速く擦られる。

「ん、ああっうう……ん~~! イクイク……ん゛っ……はぁっ……」

 サナが絶頂してもお構い無しで、蝙蝠はペニスをサナに擦りつけ続けた。

「あっ、ぁあああ……ん、あん……」

 一人でするときでさえ、これほどまでに肉芽を攻めたことはなかった。ぷっくりと膨れ上がり、熱を帯びたそこを中心に、全身に快感が駆け巡る。頭の中で何かが弾けるような感覚。何度目かわからない絶頂、潮吹き。それでもまだ彼は満足しない。サナの蜜壺から溢れ出た愛液が、腹部からアンダーバストまでを濡らす。

「ん、ぁあああ……あ゛っ! んん……」

 サナは涎を垂らしながら、獣のように叫んだ。より強い快感を身体が求めているのだろうか。自分でも気が付かないうちに、太ももで彼の雄の部分を強く挟んでいた。その状態で激しく動き続けたモリサキ。流石に限界が来たのか、一瞬ぶるっと震えたかと思うと、どばっと大量の熱いねばねばとした液体が、サナの顔にぶちまけられた。

 その瞬間、「彼女を離すんだ!」という聞き覚えのある声が聞こえたかと思うと、洞窟内が突然明るくなった。

 少しずつ目が慣れてきて、状況を理解できた。武装した研究所のメンバーが、銃を構え、タクティカルライトでこちらを照らしていた。そのメンバーの中には、ボス……そしてモリサキの姿もあった。サナはモリサキだと思っていた大蝙蝠の方を宙吊りになったまま見た。大蝙蝠は、ゆっくりとサナを地面におろした。

「待って……どういうこと? モリサキくんが二人……?」

 ボスがゆっくりと一歩前に出た。

「落ち着いて聞くんだ。モリサキくんは、自分の遺伝子を使って研究を進めていた。研究室が爆発した日、彼はそれと同時に逃げ出した蝙蝠をずっと追っていたんだ! つまり、その蝙蝠はモリサキくんの遺伝子を使って造られた新人類だ」

 サナは深呼吸をしてから、ゆっくりと唇を開いた。

「どういうことかは分かりました……でも、銃をおろしてくれませんか。彼は……この蝙蝠は人語を理解しており、意思疎通をはかることが可能です」

 モリサキは「意思疎通!? こいつは大暴れして、研究室をひとつ破壊しているんだぞ!」と叫び、銃を構えた。

「待って、落ち着いて……わけがあるはずよ。彼は――」

 サナは途中で言うのをやめた。研究所のメンバーは蝙蝠に対して強い殺意を抱いているのが、火を見るよりも明らかだったからだ。それは、蝙蝠も理解していたらしい。彼は、かすれた声で「サナ、今だから言うよ――」とそう発した。その瞬間、乾いた音が数回洞窟の中に響いた。

 サナは天井から落ち、ぐったりとして動かなくなった蝙蝠を抱きしめた。

「何よ……今だから、何? 何を言おうとしたの?」

 蝙蝠の目は光を失い、もう何も見ていなかった。

 あいうえおかき様のリクエスト作品です。リクエストありがとうございました!