薄暗い夜道。サナはばっと後ろを振り返った。そこには切れかけの白熱灯が取り付けられた電柱があるだけで、誰もいない。少なくともそう見えた。
(まただ……誰かに見られている気がしたんだけど……)
気の所為だ。サナは自分に言い聞かせ、再び歩き始めた。
◆ ◆ ◆
帰宅後、サナはネットで調べ物をしていた。
『夜道 誰かに見られている気がする』
検索結果に、具体的な精神病の名前が並ぶ。いくつか防犯に関する記事もヒットしたが……。
「やっぱり、気の所為なのかなぁ……」
サナはパソコンをシャットダウンすると、ベッドに入った。
◆ ◆ ◆
夜、サナは人の気配を感じて目を覚ました。ベッドから飛び起きようとして、身体が動かないことに気がついた。闇に目が慣れてきた頃、自分がベッドに手足を縛り付けられていることがわかった。
「な、何これーー」
驚きのあまり、叫びそうになった。だが、何者かの手によって、口を塞がれた。
「しー、静かに。夜なんだよ。大きな声を出しちゃ駄目でしょ?」
見たこともない男だった。男は右手でサナの口を塞ぎ、もう片方の手で……サナのショーツを握っていた。それをしきりに嗅いでいる。そういえば、下半身がすーすーする。おそらく、この男に脱がされてしまったのだろう。
恐怖で心臓が爆発してしまいそうだった。
「ああ、サナちゃん、すごい。なんていい匂いなんだ。ふふ、お家に呼んでもらえて嬉しいよ。お家デートだね」
(これはきっと夢だ……最悪の……夢……)
「絶対、騒がないでね。いい?」
騒いだら、殺す。そう言いたいのだろう。サナは仕方なく、頷いた。男はにこっと笑って、口元から手を離した。
男はスマホとスタンドを取り出すと、ベッドのフレームに取り付けた。録画開始を知らせる、軽快な電子音。
「俺とサナちゃんの初エッチ。絶対録画するって決めてたんだ~。ああ、後で見るのも楽しみっ! サナちゃんとエッチするのはもっともっと楽しみっ!」
(どうして、私がこんな目に……)
「あ、パンツはもらうね! いいよね? ありがとう!」
サナは何も言っていない。それなのに、男は勝手に話を進めてしまう。どんどん、サナにとって悪い方向へ悪い方向へと。
「さあて。まずは可愛いおまんこを舐めさせてもらおっと。いーっぱい気持ちよくしてあげるからね」
大股を開いた状態で縛り付けられているサナに、逃れるすべはない。男は自分の顔を彼女の秘所に近づけると、大きく息を吸い込んだ。
「はあ……いい匂い……エッチな匂いがするよ」
「い、嫌……やめて、誰にも言わないから……」
「ふふふ、サナちゃんってば恥ずかしがっちゃって。大丈夫だよ。君のおまんこはすっごく綺麗だ。恥ずかしがることなんて、ないんだよ」
男は秘所の直ぐ側にいるので、彼が何か話すたびに熱い吐息があたる。
男の濡れた舌が……ついに触れた。
「っ!?」
ペロペロと舌を動かし始めた。柔らかく、温かい。気持ち悪くて仕方がないはずなのに、わずかに身体がびくんとしてしまう。
「うん、うん……ふ、おいしー。やらしい味がするよ。サナちゃんのエッチなお汁の味。夢みたいだ。サナちゃんのおまんこをこんな風に……そうだ! 俺ばっか幸せじゃだめだよね! ごめん、ごめん。怒らないで……もっと気持ちよくしてあげるから!」
男はぐっとサナの秘所を広げると、中指と薬指を挿れた。
「や、やめ……ぁあっ」
「かぁわいーーよぉ……大好き……あはは」
男は笑いながら指の動きを速めていく。サナは唇を噛みながら、快感に耐える。卑猥な水音が、彼の指の動きに合わせて生じる。
「騒がないでってお願いしたけど、喘ぐのは我慢しなくていいんだよ? 気持ちよくってでちゃう声は仕方ないもんね? ねえ、聞こえる? おまんこがぐちょぐちょ言ってるよ。脚もビクビクしちゃってる。このまま続けたら、イッちゃうんじゃない? はは、イッちゃえ、イッちゃえ」
悔しいことに男の言う通りだった。サナは悲鳴を上げると、秘所から潮を噴き出すとともに、絶頂を迎えた。
(く……こんな……)
「わわわ、すごーい。そんなに気持ちよかった? えへへ、そうだよねえ。好きな人とするエッチって、気持ちいいに決まってるもんね!」
男は指を引き抜くと、すっかり大きくなった……大きすぎる肉棒をサナの秘所にあてがい、そのままぐっと押し入れた。ぐりんと先端部分が入ってしまうと、サナは「ぁああっ」と声を上げた。
「や、やだ……せめて、ゴムを……」
「なんで? 恋人なのに? 安心してよ。俺は本気だからさ。これでも結婚を前提にお付き合いしているんだ。だから、ゴムなんていらないでしょ」
男は腰を動かし始めた。強く、激しく、突き立てられる肉棒が、サナの内部を刺激する。
「っ!? きゃあああーー!」
「ふふふ、可愛い声出しちゃって~。嬉しいよ。俺のをたっぷりあげる。ふふふ」
「いやあ、だめぇっ! な、中は……」
男はサナの身体を持ち上げ、自分の方へ引き寄せると、深く腰を打ち付けた。 男は乱暴に腰を振ると、精子をサナの秘所へ放出した。サナは絶頂に達し、意識を失った。
◆ ◆ ◆
「ウルシマさん、朝ですよ。カーテン、開けておきますね」
優しく微笑みながら、カーテンを開ける。
「看護師さん……お願い、ずっと側に居て。眠れないの。一人になると、眠ってしまうと、あいつが来るの。お願い、本当なの。あいつは、あいつは本当にいるの」
この患者は、誰かに常に見られているのだと言って、入院することになった。あう薬がなかなか見つからないのか、症状は良くなるどころか、むしろ悪くなっている。ベッドに縛り付けられて、男に乱暴をされた。そのときに、録画までされた。男の風貌を証言するから、警察を呼んでくれ。もちろん、スタッフは皆、適当にあしらった。それでも、少しだけ気になったスタッフの一人が、病院の監視カメラを確認したが……それらしき男は映っていなかった。
毎回のように「中に出された! 体液を調べて!」と訴えるが、彼女の体液しか検出されなかった。
「ごめんなさいね。他の患者さんもいるし……また後で来るから」
「嫌っ、嫌……お願い、お願い……」
看護師は困ったように微笑むだけで、結局、行ってしまった。
「どうして。どうして誰も信じてくれないの……本当なの。あいつは本当にいるのに……」
サナは頭から布団をかぶった。またあの気配だ。
「嫌……どこかに行って……私は……」
「サナちゃん、大好きだよ」
声は、すぐそばで聞こえた。