一人暮らしのアパートに帰ったサナは、Teacupで購入した万年筆をぼんやりと眺めていた。
「素敵な人だったな」
あんなに魅力的な男は初めて見た。ミカヅキさんが男だったら、あんな感じだったのだろうか。ふたりとも、人間とは思えないような美しさだ。
「また……会えるかな」
サナは万年筆を見つめながら、呟いた。
夢には、あの男が出てきた。Teacupの店員――店長かもしれない――で、赤い瞳をした、ぞっとするほど美しい男。あの男は慣れた手付きで、次々とサナの衣服と下着を脱がしていった。あっという間に裸になってしまった。あの男が、サナの身体を舐めるように見ている。恥ずかしさよりも、性的欲求のほうが勝っていた。男はちっとも衣服を脱ごうとしないので、サナは苛立ちすら感じていた。男の裸を見たかったのだ。顔や首、腕のように白いだろうその身体を。
「気持ちよくして差し上げます」
男がサナの耳元で囁く。ぞくぞくした。この際、男の裸が見られなくても良い。早く、欲しい――。
男が、サナの耳から首筋に向かってつーっと舌を這わせる。湿った温かな舌の感触は、くすぐったくもあり、心地よくもあった。鎖骨のあたりまで舌を這わせると、軽くキスしてから口を離した。
男は、ニヤッと笑うと、サナの目を手で覆った。あの黒い革手袋の感触。手袋越しに、男の熱を感じる。サナの唇に、柔らかいものが触れた。目隠しされているから定かではないが、キスされているようだ。くちづけはどんどん深くなっていき、互いの舌が絡み合う。
「ふ……ぁッ、ん♡」
キスだけで、蕩けてしまいそうだった。無意識のうちに、男にしがみついていた。
「ん……♡」
名残惜しそうに、唇が離される。まだ、彼の手はサナの目を覆っている。次は何をされるのだろう。期待で胸が膨らむ。
温かな何かが、左胸の先端に触れた。おそらく、舌だろう。右胸の先端には、あの革手袋の感触。敏感な部分が指で擦られたり、口に含まれたり。視界を遮られているせいか、身体が敏感になっている。
「ぁああッ♡ は♡ あっん♡」
サナは甘い声をあげる。男も興奮しているのか、息遣いが荒い。男はサナの胸をたっぷりと堪能したあと、ようやく目隠しをやめた。妖艶な笑みを浮かべながら「挿れますよ」という。抗う理由はなかった。サナは仰向けに寝転んだまま、脚を大きく開いた。大事なところが丸見えだが、気にならない。普段の自分なら、けしてこんなことはしないのだけれど。男は脚と脚の間に入り込むと、ファスナーを下ろし、すでに大きくなった自身を取り出し、それをサナの身体に沈めていく。
「ぁああッ♡ 大き……♡ あん♡」
サナの中は挿れられたそれのせいで、ぎちぎちだった。僅かな動きで快感が生じる。自分の動きでも、相手の動きでもだ。男は何も言わずに、動き始めた。一定のリズムで、サナを突き上げる。自身を半分引き抜いては、再び最奥へ。それを繰り返す。
「ぁあッ♡ ……あん♡ あッ♡ ……はぁあッ♡ あんっ♡」
突き上げられるたびに嬌声をあげるサナ。腰をしっかりと掴まれていて、逃れることもできない。逃れたいとも思わなかった。ただ、男に身を任せ、この時を愉しむ。
「うぁ♡ んッ♡ あ……♡」
肉棒のかえしが、サナの中を強く擦る。男も心地よいのだろう。顔が赤く上気している。
(気持ちいい……♡ 頭真っ白……)
名前も知らない男に抱かれる夢を見るなんて、自分は相当な淫乱に違いない。そんなことを一瞬考えたが、その考えはすぐに快感の波に打ち消されてしまった。男の動きが速くなった。速度を増しても、しっかりと奥まで突き上げられる。
「あッ、んッ、ああッ♡ あッん♡ イクッ♡ イッちゃ……ぁああッ!!!」
絶頂と同時に、サナは背中を反らせた。これ以上の快感を拒むように身体が何度か跳ねた。しかし、男は動きを緩めることはしないし、掴んだ腰も離さない。
「ぁああ゛ッ♡ ああ゛♡ んん゛ッ♡ ああ゛あ゛あ゛ッ♡」
獣のような叫びをあげながら、いつの間にかサナ自身も腰を振っている。
「~~ッ♡ ふ、あッ♡ ん……ん゛ッ♡」
激しいピストン。蜜壺からは中で散々かき混ぜられ、泡立って白くなった愛液が漏れ出ている。もう何回イッたかわからない。何回イッても、男は止まらないだろう。
「ぁああッ♡ イクッ――ぁああああ゛あ゛ッ♡」
夢の中だというのに、不思議なこともあるものだ。サナは激しくイッたあと、気を失ってしまった。
(あんなエッチな夢を見るなんて、私って淫乱なんだ)
目を瞑ると、昨晩の夢が鮮明に思い出される。ただでさえ色っぽいあの男の頬が赤いと――。
(ッ……いけない、朝の講義に遅れちゃう)
ドアを開く。真っ先に目に入るのはあの男の姿。
「いらっしゃいませ。おや、またいらしてくださったんですね。昨日ご購入いただいた万年筆はどうでした?」
サナは昨晩の夢の感想を、さも万年筆の感想であるように答えた。
「良かったです……すごく、良かった」
「それは良かった」
男がほほえみを浮かべる。どうしよう。何か言わないと、これっきりになってしまう気がする。何を言えば、この男と関係を持てるだろう。あることを思いついたサナは叫ぶように言った。
「あの……ここって、バイト募集していますか?」