当サイトは18歳未満の閲覧を固くお断りしております。

ヤバい女(NL)

aaa様のリクエスト作品です。リクエストありがとうございました!


 リクエストをもらってから、一か月が経ってしまった。メッセージはやや挑発的なものだったが、リクエストの内容自体は、それほど頭を悩ませるものではなかった。私の書く物語を気に入ってくれていること、自分の出したリクエストをもとに書かれる作品に期待しているだろうということが、文面から滲み出ていて――それが私の筆をぴたりと止めてしまった。嬉しくもあり、照れ臭くもあり……プレッシャーでもあった。「そんなに?」と思われるかもしれないが、私にとっては一大事だったのだ。

 職場でも、休み時間になれば、何かこのリクエストにふさわしい案は無いものかと頭を働かせていた。物理的に頭を抱えて唸り、何かメモをとっては溜め息を吐く。そしてまた再び、頭を抱えて唸る……そんな奇行を繰り返していたところ、同僚のウルシマさんが心配して声をかけてくれた。

「伴野さん……大丈夫ですか? どうかしたんですか?」

 さすがの私も「趣味で卑猥な小説を書いているんですが、そのネタが思い浮かばずに困っているんです」とは言わない。その程度の社会性は身につけている。

「実は……趣味でホラー小説を書いているんですけど……ネタ切れになっちゃって」

 私がそう言うと、ウルシマさんは少し考えてから、彼女が経験したという恐ろしい話を聞かせてくれた。以下の物語は、ウルシマさんから聞いた話をもとに、私が小説化したものである。プライバシー保護のため、一部内容を改変している。それから、一部、私の想像も含まれていることをご承知いただきたい。

 ◆ ◆ ◆

 二か月ほど前、同期が会社を去ることになったのだったか、子どもが生まれたお祝いだったか……理由は思い出せないが、久しぶりに同期で集まって、飲み会でもしようということになった。もちろん、サナもその飲み会に参加した。普段は所属する部門も異なるので、同期といえどほとんど話す機会がない。くだらない話から、仕事の愚痴など……良いストレス発散になった。

 お開きになり、半分がサナと別方向の電車に乗った。途中で一人、二人と下車していき……気が付けば、同じ最寄り駅を利用しているモリタ トモヤという同期の男と二人きりになっていた。電車を降りるなり、モリタは小さく呟いた。

「帰りたくないなぁ……」

 サナが「なんで? 今日、そんなに楽しかった? 遠足帰りかよ」とからかうように言うと、彼は神妙な面持ちで首を横に振った。

「今日は楽しかったよ。でも、違うんだよ……それがさ……」

 モリタは暗い表情のまま、「元カノが家に来るんだよね」と呟いた。モリタによれば、その女とは結婚も視野に入れ、真剣に交際をしていたのだという。だが、彼女はとても嫉妬深かった。付き合いたての頃は、「今日は何をしていたの?」だとか、「どうしてすぐ返信してくれなかったの?」などという束縛めいたことを言われる度に、「俺のこと、どれだけ好きなんだよ」と微笑ましい気持ちになった。だが……段々、鬱陶しく感じるようになってしまった。周囲も、モリタに対して「お前、彼女のこと、ちゃんとしろよ」と言うようになった。

 こんな女とは、もう付き合っていられない。そう思ったモリタは、彼女に別れを切り出した。意外にも、彼女は「わかった」と素直に応じた。だから、モリタも安心したのだが……。

「それから、毎日来るようになったんだよ。ドアとか壁とかバンバン叩いてさ……あることないこと喚き散らして……どうかしているよ、あの女」

 モリタの目の下には、うっすらとクマができていた。気の毒に思ったサナは、モリタを家に泊めてやることにした。二人が男女の関係になり、本格的に同棲するようになるまで、それほど時間はかからなかった。

 ◆ ◆ ◆

 サナにとって、初めての同棲だった。いろいろと不安もあったが、思ったよりもいいものだった。

 うつ伏せでベッドに倒れ込んだサナのふくらはぎを、モリタがゆっくりと揉む。

「お疲れ様。今日は早く寝よっか……」

 そう言いながらも、モリタの手はサナの臀部へと移る。早く眠らせるつもりなどないのだろう。サナはくすっと笑ってから、身体を捻るようにして仰向けになった。

「素直に、エッチしたいって言えば?」

 モリタはサナに覆いかぶさりながら、「……エッチしたい。疲れてるのに、ごめん」とはにかんだ。

「謝らなくていいって……私もしたいし」

 サナはモリタの首の後ろに腕を回すと、そのまま自分のほうへ引き寄せた。唇が重なり、濡れた舌が絡み合う。穏やかだった動きは、段々と貪りあうようなものになっていく。互いの衣服を脱がしたり、ずらしたりする間も、唇はけして離さない。溶け合うように、サナとモリタの境界が曖昧になっていく。

 モリタはサナの首元に顔を埋めると、耳の裏や首筋に舌を這わせる。熱い吐息が肌を撫でるのが、少しだけくすぐったい。モリタの唇は首から鎖骨、さらにその下へ移動していく。彼は、すでに露わになっているサナの膨らみを揉みながら、片方の先端を口に含んだ。唇で挟むようにしながら、舌先でくすぐるような愛撫にぞくりとして、サナの口から甘い声が漏れる。しばらくその反応を楽しんだ後、モリタはさらに下へ……。

 サナの太ももを押すようにして、ゆっくりと脚を開かせる。モリタの髪が、ふわりとサナの太ももに触れた。すでに愛液で濡れている秘所を焦らすような緩慢な動きで舐める。

「あん、あ……っん……」

「何……? もっと? ほら、素直にそう言えば?」

 そう言いながら、モリタはニヤッと笑った。先ほどのやり返しだろう。サナは小さく「馬鹿……」と呟く。モリタは口角を上げたまま、肉芽をちろちろと舐め始めた。時折、口に含んで吸い上げたり、舌を絡ませたりする。

「はぁっ……んんっ、イっちゃう……ぁああッ!」

 サナの身体がびくんと跳ねた。モリタは顔を上げると、屹立した己を数回しごいてから、サナの秘所にあてがう。そのまま腰をぐっと前に押し出し、ゆっくりとサナの中に自信を沈めていく。愛液で満たされた蜜壺はすんなりと肉棒を受け入れ、あっという間に根元まで飲み込んだ。

「……きつ。あんま、締めんなって……すぐ出ちゃうだろ……」

「そんなこと言われたって……んッ、あ……」

 モリタがゆっくりと腰を動かし始めた。奥まで力強く突き上げ、抜けてしまう一歩手前までゆるゆると引き抜く。そしてまた、最奥まで一気に穿つ。モリタが腰を揺らすたび、二人を繋ぐ場所から、じゅぷ、ぐじゅっという水気を含んだ淫靡な音が立つ。

「あっ、ああ……はぁ……ぁあ、あっ、ん……」

 肉棒で貫かれるたび、サナの中がきゅっと締まる。モリタは「可愛すぎ……」と微笑みながら、サナの頬にキスをした。そして、段々と腰の動きは速く、力強くなっていく。

「ごめん……そろそろ限界……」

 モリタはサナの片脚を抱え、さらに腰を密着させる。肌と肌がリズミカルにぶつかる。限界まで膨らんだ肉棒がサナの内側を抉り続ける。

「はぁっ……あっ、ん、私も……イく……あぁああっ、ああっ!!」

 サナは達しながら、自分の中に沈められた肉棒をぎゅっと締め上げた。それと同時に、彼も肉棒の先端をサナの最奥に押し当てたまま、達した。根元がぶるっと震え、先端から熱い白濁が飛び出す。熱いものが身体の内側を満たしていく……それを感じながら、サナはモリタを抱き寄せた。そして、そのまま二人とも眠ってしまった。

 ◆ ◆ ◆

 バンバンとドアや壁を叩くような大きな音で、二人は目を覚ました。スマホを見ると、深夜二時だった。モリタとサナは顔を見合わせた。直感で、すぐにわかった。モリタの元カノが、サナの家にまで来てしまったのだろう。二人はなるべく音を立てないように細心の注意を払いながら、ベッドから身体を起こし、玄関のほうへ向かった。

 サナがそっとドアスコープを覗くと、包丁を逆手に持った髪の長い女が俯き、立っているのが見えた。“コレ”がモリタの元カノなのだろうか。聞いていたよりも、ずっとヤバい女ではないか――。

 そのとき、女がふいに顔を上げた。ドアスコープ越しに、目が合ってしまう。

「見てんじゃねえよ。さっさと開けろ」

 女は包丁でガツンとドアを殴りつけた。

 ◆ ◆ ◆

「うわ……それで……どうしたんですか?」

 気が付けば、私はウルシマさんの話に夢中になっていた。続きが気になる。……だが、ウルシマさんは困ったように笑って「それで……終わりです」と言った。思わず、「え? 終わり?」と言ってしまった。つまり……彼女が私に話してくれたことは、作り話だったのだろうか。……別に、私はそれでも構わなかった。むしろ、そのようなヤバい女がこの世にいなかったのだとわかれば、それはそれで安心だ。

「だって……内緒にするって決めたんで。彼氏と」

「……?」

 ウルシマさんは照れたように笑うが、私にはわけがわからなかった。彼女の言う“彼氏”はモリタのことだろうということしか。

「ええと……元カノはまだウルシマさんの家に来るんですか? それなら、警察に相談したほうがいいですよ」

 私が“警察”という言葉を口にした途端、ウルシマさんの顔が般若のようになった。

「……伴野さん、やっぱり、私が今日話したこと、忘れてもらえますか? 彼氏の元カノは、もう家に来ていません。いや、一生来ないんです。私と彼氏で……”解決”したので」

「それって……」

 私の背中を、冷たい汗が流れていく。ウルシマさんはいつもの可愛らしい笑顔に戻ると、私の肩を掴んで、耳元で囁いた。

「とにかく、忘れてくださいね。伴野さんのことも、”解決”しなくちゃいけないことになったら……嫌なんで」

 今月、二人は結婚するのだという。