サナは、海へ釣りに来ていた。ろくな釣果も出せず、手ぶらでこのまま帰るのも癪なので、浜辺を歩いていた。そんなとき、何か大きなものが打ち上げられているのが見えた。近寄ってみると、それは蛸の人魚のオスだとわかった。人魚自体は珍しくないが、こんな風に打ち上げられているのは見たことがない。
「大丈夫?」
「うう……助けて……干からびてしまう……」
サナは彼を海の方へ引きずって運び始めた。下半身の触手のせいか、人間の男性よりもずっと重い。何とか海水にあたる場所まで運び終わる頃には、サナは汗だくになっていた。
「あ……ありがとう。ここまで来れば、あとは自分で……」
人魚は自力で這い、海に浸かった。
「ああ、ありがとう、ありがとう! なんて優しい人間さんなんだ! 僕はサーザ! 君の名前を教えてくれるかい?」
サーザの喜びようを見ると、苦労して助けた甲斐があったというものだ。
「ふふ、私はサナよ」
「サナ! ああ、サナ! きっとお礼をするよ!」
サーザはサナの名前を愛おしそうに何度も呼んだあと、海へ帰っていった。
◆ ◆ ◆
次の日も、サナはボウズだった。こうも魚が釣れないとは。昨日、良いことをしたから今日は大漁かも……なんて期待もあったのだが。
「サナ!」
例の蛸人魚のサーザが腰まで海につかったまま、こちらに手を振っている。サナが近づいていくと、サーザは見たこともない青い花を差し出した。
「これを君に渡したかったんだ」
昨日、そう言えば、お礼をするって言っていたっけ。別にいいのに。だが、断る理由もないのでサナはその花を受け取った。その途端、サーザが真っ赤になった。
「ま、まさか……受け取ってくれるなんて! やった! これで僕達は番だ!」
「へ?」
思いもよらぬ言葉にサナは目を丸くした。まさか、花を受け取ることにそんな意味があったとは。サーザがあんまり喜ぶので、そんなつもりはなかったのだと言い出しにくい空気になってしまった。
◆ ◆ ◆
結局、プロポーズを受けたわけではないということを伝えられないまま、サナは海に……夫のもとに通う羽目になってしまった。彼は、サナが釣りをしている姿を見ているだけで、幸せそうだった。ますます言い出せなくなってしまった……。
あるとき、いつものようにサナが釣りを始めようとすると、サーザが「あの……さ……」と声をかけてきた。
「どうしたの?」
「そろそろ、交尾をしない? 僕達ほら、番なんだし……」
「あ……ええと……」
「大丈夫。絶対、気持ち良くするから! ね、心配しないで……」
そういう問題ではないのだけれど。そう思っても、彼の笑顔を見てしまうと……。
「いいわ……その……交尾をしましょうか」
「うん!」
サーザは元気よく返事をすると、サナの身体に自分の触手を絡ませた。
「きゃっ……」
冷たさに驚いて、サナは声をあげた。
「ご、ごめん! 大丈夫? もしかして、痛かった? そうだよね、人間さんはデリケートだもん……それなのに僕は何も考えず……」
うろたえるサーザにサナは優しく微笑みかけ「驚いただけ。大丈夫よ」と言った。
「よかった……じゃあ、続けるね」
サーザは器用に触手でサナの服を脱がせていく。下着も取り去られ、あっという間に一糸まとわぬ姿になった。
「ん……ふぅっ……」
触手が口内に侵入してくる。サナはそれを受け入れ、触手に舌を絡めた。吸盤が、優しく口内を吸う。これを挿れられたら、どうなってしまうだろう……。そんなことを考えていると、別の触手が胸に触れた。吸盤が、胸の先端に吸い付く。
「んひゃっ!」
「気持ちいい? いっぱい気持ちよくしてあげるからね……」
いくつもの触手がお腹や背中を這い回り、全身を愛撫する。身体全体が性感帯になってしまったような感覚に、頭がぼうっとする。触れられる場所すべてが気持ちがいい。
「はっ、あっ、ああ…………ぁあああっ!!」
ぬるりと触手が、サナの割れ目をなぞる。肉芽に吸盤を吸い付かせながら、触手の先端がゆっくりと挿入される。冷たくて太い、粘液を帯びた触手がサナの内側を満たす。サナは快感に身体を震わせた。
予告なく、触手は動き始めた。激しく出し入れされるごとに、頭が真っ白になる。もう何も考えられない。サーザから与えられる快楽を受け入れるのみだ。
「ぁああっ、あんイ゛グッ……あっ、ぐ……」
サナはサーザにしがみついた。サーザはそんなサナを優しく包み込むように、触手を絡ませる。
触手の動きはどんどん速くなっていく。人間のものであったら、こんな奥までは触れられなかっただろう。サナが絶頂を迎えると同時に、熱い粘液が身体の中に吐き出されるのを感じた。サナの身体はまだわずかに震えていて、サーザの触手からは精液が放出され続けている。サナの腹部が膨らんでいく。
「んっ、うう……ぁああっ、まだっ、でてる……」
大量の精液が注ぎ込まれて、膨れ上がったお腹からは、ちゃぷちゃぷという水音が聞こえてきそうだった。
(すごい……もうこれの虜になっちゃった……)
人間との行為では二度と満足できないだろう。サナはちらりとサーザの方を見た。彼も満足したようで、頬を赤らめながら微笑んでいる。
(誤解を解くのは……まだ先でいい……よね)
そのとき、触手が引き抜かれ、サナの中から大量の白濁とした液体が零れ出た。