電車を乗り継ぎ、自宅から5時間かけて、サナは■■村に来た。まだ暗いうちに家を出たのだが、結局、昼過ぎになってしまった。駅前の小さな蕎麦屋に入り、昼食をとることにした。
ガラガラと入り口の戸を開けると、感じの良い女性が「いらっしゃいませぇ。どこでも好きなところに座ってください」と声をかけてくれた。店内にはサナ以外の客はいない。サナは入り口から一番近いテーブルに腰を下ろした。清潔感はあるが、建物や家具自体がかなりの年代物で、どこか懐かしい気持ちになる。
「お客さん、見ない人ねぇ。どこから来たんですか?」
サナが最寄り駅……は通じないだろうから、比較的近所の、全国的に有名な都市の名前を告げると、女性は大げさに驚いて「まあ、大都会じゃないの。なんで、こんな田舎なんかに……この辺は何もないですよ」と言った。
「私、温泉に目がないんですよ。休みのたびにあちこちへ出かけて、温泉を巡るくらい好きなんです。この辺に、秘湯があると聞いたものですから、どうしても気になってしまって」
サナの言葉を聞いた途端、女性の顔が真っ青になった。
「それってまさか……猿神様の湯のことじゃあ、ありませんよね……」
「え?」
「山の奥の方にある温泉で、地元の人間は猿神様の湯って、呼んでいるんです。その名の通り、猿神様っていう、大猿の姿をした神様が、この辺じゃあ、今でも信じられているんですよ。昔、この辺で飢饉があったときに、両手いっぱいの食べ物を持った猿神様が山から降りてこられて、人々を助けたと言われています。その後も、何かあるたびに猿神様は■■村の人々を助けてくれた。だから、そのお礼に、村人たちは猿神様の湯を作ったんです」
女性はどこか誇らしげに話すが、その手の言い伝えはどこにでも残っている。今でも信じているだなんて、この辺の人たちはスマホすら持っていないのではないか。そんな失礼なことを考えていると、女性がサナをじっと見つめてきた。
「な、なんですか……?」
「猿神様の湯は、猿神様のものであって、人間が入る場所じゃありませんよ。こんなところまで来たのに残念ですが」
「そんな! せっかく来たのに……せめて、見るだけでも!」
女性は、なかなか猿神の湯の場所を教えてくれなかった。サナは粘り強く女性に頼み込んで、ようやく教えてもらえた。
食事を終えて、店を出ていくサナを、女性は心配そうな表情で見送った。教えてはいけなかったかもしれない。本来であれば、外部の人間に教えること自体、ご法度なのだ。だが、あの生意気な小娘が、自分を田舎者と馬鹿にしているような態度が透けて見えて、少し痛い目に遭えば良い。そう思ってしまった……。
◆ ◆ ◆
険しい山道を、女性に教えてもらったとおりに進んでいく。登山用の靴を履いてきて良かった。女性の言う通り、地元の人間はよっぽどの理由がない限り、猿神の湯への道すら使わないらしく、獣道よりも酷い有様だった。落ち葉や石ころで足場は悪いし、木々のせいであまり日が差さないせいか、それらがすべて湿っているので、気を抜くと足を滑らせそうになる。
女性の言うことを聞いて、ここへ来るのをやめればよかった。地元の銭湯にでも行けばよかったと何度も後悔した。
途中、細かく休憩を入れながら進んでいった。目的地に着く頃には、空が橙色に染まりかけていた。
「わあ、すごい……!」
体力的にも限界だったが、大自然に囲まれた露天風呂を見たとき、疲れはどこかへ消え失せてしまった。
湯は乳白色で、白い湯気が立ち込めている。女性が言っていた通り、人間はここへは来ないのだろう。周囲に人工物はほとんどない。だが、不思議なことに、湯に落ち葉やゴミなどが一切浮いていない。地元の人間は猿神を今でも信仰しているという話だったから、定期的に誰かが掃除しているのかも知れない。
サナは服を脱ぐと、温泉へゆっくりと身体を沈めていった。やや熱めの湯が心地良い。
「ふう……」
温泉につかりながら、あたりを見渡す。木々が青々とした葉を茂らせていて、遠くで鳥のさえずりが聞こえる。都会で生活しているときには味わえない開放感。サナはそっと目を閉じた。
数分後、ガサガサという物音を聞いて、サナは目を開いた。
「誰!?」
茂みから姿を現したのは、真っ黒な体毛の、2メートル以上もある大きな獣だった。一瞬ヒグマかとも思った。だが、顔には体毛がなく、手足が少し人間に似ている。猿だ。それも、とても大きな。
もしかして、女性の言っていた猿神だろうか。これが本当に大昔からいる神なのか、それとも単に大きな獣なのか。
何にせよ、巨大な野生動物を目の前にして、サナの身体は震えていた。恐怖のあまり、声すら出せずにいる。
猿神はゆっくりと湯に浸かる。サナのことは、特に気にしていないらしい。この隙に、少しでも離れた方が良いだろう。サナはそっと湯から上がろうとした。だが、猿神に腕を掴まれてしまった。
「は、離して……ッ!」
抵抗しようとしたが、力が強くてびくともしない。猿神の眼は、妙にギラギラしている。サナを引き寄せ、自分の太ももの上に座らせた。猿神の手が、サナの胸元へ伸びてくる。
「な、何を……嫌ぁッ」
片腕でサナを押さえつけながら、もう片方の手で彼女の胸を荒々しく揉む。
「ぁあ……嫌、やめて……!」
必死に叫ぶが、猿神はやめない。それどころか、下腹部へ手を伸ばす。無骨な猿神の指が、サナの中に無理やり入れられた。
「嫌ぁあッ! 痛いッ! やめてぇ……」
十分な準備のできていない蜜壺を触れられ、染みるような痛みが走る。サナがどれほど泣き叫んでも、誰も助けに来ない。猿神はお構いなしに、指で擦り続ける。そのうち、身体の防衛反応で愛液が分泌されはじめ、痛みが生じることはなくなった。代わりに、快楽に支配され始めた。口からは甘い吐息が漏れる。膝をガクガクと震わせ、サナの意思とは関係なく、腰が動いてしまう。
「ぁああッ!」
やがて、サナは達してしまった。こんな獣に乱暴されて、感じるだけではなく、達してしまうだなんて。なんて屈辱的なのだろう。
猿神はサナの中から指を引き抜くと、彼女の身体を抱え上げた。そして、ぬらぬらと黒光りする、怒張した肉棒の上にサナを下ろした。一気に身体を貫かれ、サナは獣のような叫びを上げた。
「ぁあああッ、ん……ああぁッ……あああ!」
猿神は容赦なく腰を振り、サナの身体を激しく揺さぶった。人間とは比べ物にはならないほど巨大なそれで、最奥まで突き上げられる。その度に、頭の中が真っ白になってしまう。恐ろしいのに、気持ちが良くて仕方がない。
小一時間、猿神は腰を振り続けた。そして、絶頂を幾度も迎え、全身を震わせ続けるサナの中に、大量の白濁とした熱いものを注ぎ込んだ。サナのお腹がわずかに膨れ上がる。彼女の中に収まりきらない精液が、結合部から漏れ出すのを感じながら、サナは意識を失ってしまった。
◆ ◆ ◆
サナは、どこかの屋内で目を覚ました。畳の上に布団が敷かれていて、その上に寝かされていた。誰かが、自分を助けてくれたらしい。サナはほっと胸を撫で下ろした。あのまま、あの恐ろしい獣に死ぬまで慰み者にされるのかと思った。
「お目覚めになったんですねぇ。猿神様の湯で倒れていたんですよ」
見ると、昼間の蕎麦屋の女性だった。
「私……」
「いいんです、いいんです。わかってますから。猿神様に選ばれたんでしょう?」
「……は?」
言葉の意味がわからなかった。選ばれたとは、どういうことだろう。
「初めてなんですよ。猿神様が嫁を選ぶのは。もう、村じゃあ、大変な騒ぎですよ」
遠くから祭り囃子の音が聞こえる。サナは震える唇で「何を言っているんですか?」と尋ねた。だが、女性はサナの質問には答えない。
「早く準備をしましょう。猿神様……旦那様がお待ちですよ」