「君の造ったものは……何の役にも立たない。即刻、処分を命じる」
上層部の人間は、非情にもそう言い放った。サナは納得がいかなかった。実験体0326は、サナの最高傑作だった。上層部が求めるものを備えていた。ただひとつを除いて。
実験体0326は、檻の中でうねうねと蠢いていた。ファンタジーにでてくる雑魚キャラのスライムによく似ている。この見た目が、気に入らないのだと上層部は言う。
「とにかく、こんな見た目じゃ客受けが悪い。どう見ても弱そうだろう」
サナは素早く「はじめ、見た目についての要求はなかったはずです! キメラは……実験体0326は、究極の……」と反論しようとしたが、上層部に「今は要求のひとつなんだよ。とにかくこの話は終わりだ」と遮られてしまった。キメラとは、実験体0326の愛称である。殺戮兵器にしては、可愛すぎる見た目とその愛称。上層部には気に入ってもらえなかったが、サナはこの生き物を溺愛していた。だから、処分など、到底応じられない……。サナは、秘密裏にキメラを家に連れ帰った。上層部には、処分をしたという嘘の報告書を提出した。
◆ ◆ ◆
キメラはサナによく懐いており、いつも彼女の側にいたがった。サナが仕事などで外出している間は、大型犬用のベッドの上でじっとしているようだった。その姿を、何度かペットカメラで確認した。それから、夜眠るときはサナと同じベッドで眠った。ベッドの上では、キメラはサナの身体にまとわりついてくる。その感触は弾力がありながらすべすべとしていて、気持ちが良かった。見た目通り、スライムのように柔らかく、蛸のように細長い触手が、サナの至る所を撫で回す。キメラとともに過ごす時間はまさに夢のようだった。
◆ ◆ ◆
あるときから、キメラがサナの胸や股を重点的に触れるようになっていることに気がついた。キメラは、生殖機能を持たない。それゆえに、かえって興味があるのかもしれない。サナは好きにさせておいてやることにした。だが、それは大きな間違いだった。
夜中、サナは目を覚ました。キメラが自分の身体に覆い被さっていた。体表からは体液が分泌され、いつもと違ってぬるぬるしている。
「キメラ……? どうしたの?」
触手が絡みつき、パジャマの中へと入ってくる。その感触にサナは身を震わせた。キメラは、自分とそういうことをしようとしている……。
「あっ、ん……」
キメラの細長い触手が、サナの胸の敏感な部分を執拗に責める。サナに、最愛のキメラを拒む理由などなかった。キメラの求めるまま、身を委ねる。柔らかく温かい触手。それはしばらく胸を丁寧に愛撫していたが、だんだんと下へ向かっていく。やがて、触手はサナの脚と脚の間に滑り込み、秘所に触れた。ぷちゅり、と触手の先端が挿入される。
「ひゃうっ……」
予想以上の快感に、サナは声を上げた。次第に触手は太く、大きくなっていく。サナの中を激しく突き上げる。全身が火照り、快楽の波が無数に押し寄せ、意識を手放しそうになる。
「ぁあっ、イク……ぁあ、ん……」
サナの身体は痙攣し始めた。だが、キメラの動きは止まらない。むしろ激しさを増していく。太くなった触手がサナの中を何度も突き上げる。すでに頭の中は真っ白で、もう何も考えられない。キメラは最後に一番奥に触手を押し込むと、そこで果てた。熱いものが、サナの中にどくどくと注ぎ込まれる。
(キメラが……射精……?)
おかしい。キメラに生殖機能はないはずだ。いったい、どうして……考えようとしたが、達したばかりの頭では状況の整理すらできない。キメラはというと、再び動き始めた。
「キメラ、待って……ぁあっ、はぁ」
その後、キメラは夜通しサナを犯し続けた。キメラが行為をやめ、眠りについたのは、日が昇ってからのことだった。
キメラを起こさないように、サナはまだだるさの残る身体を引きずるようにして起き上がる。そして、自宅のラボから道具をとってくると、キメラのサンプルを採取した。
装置にセットして、キメラのサンプルを確認したサナは目を疑った。
「嘘でしょう。こんな短期間で、変異しているだなんて……」
調べれば調べるほど、サナは恐ろしくなった。キメラは自らの遺伝子を変異させ、生殖機能を獲得しただけではなかった。高度な変身能力に、あらゆる毒への免疫まで獲得していた。果てには、光合成までできるようになっている。どれも、造ったときには持っていなかった能力だ。それに……こうして観察している今も、変異は続いている。いったい、キメラはどうなってしまうのだろう……。
「……っ!」
そのとき、サナは確かに胎動を感じた。変異を続けるキメラ。サナの胎の中のものも、当然……。サナは笑った。自分は間違っていなかった。やはり、キメラは処分されるような失敗作ではなかったのだ。
◆ ◆ ◆
数年後、恐ろしい兵器の登場で世界のパワーバランスは大きく変わった。その兵器の名前は「キメラ」。開発したのはウルシマ博士だと言われているが、現在、彼女は行方不明である。噂では、どこかの地下室で「キメラ」をつくり続けているというが、真偽は定かではない。