サナが国王に仕えるようになってから数年が経った頃。幼馴染みのジャックが国王に護衛として仕えることになった。ジャックはもともと騎士団に所属しており、その活躍がサナの上司の目にとまった。業務内容は異なるものの、形式上、ジャックはサナの部下になった。
十年ぶりに会ったジャックは、記憶の中の彼とは別人のようだった。鋭い眼光に、逞しい体。よく日に焼けた肌は健康的だ。色白で泣き虫だった幼少期と比べれば、すっかり見違えた。
「久しぶり。元気にしてた?」
ジャックはニコリともせず、「はい」と短く答えた。
「敬語じゃなくてもいいんだよ。私達、幼馴染みじゃない」
「お気遣いありがとうございます。ですが、公私混同は避けたく、他の部下と同じように接していただければ幸いです」
サナは寂しそうに「わかった。変なこと言ってごめんね」と言った。拒絶されたようで、胸が少し苦しい。サナは無理して笑顔を作った。
幼くして騎士団に入ったジャック。それからというもの、全く会う機会がなかった。こうして再会できたというのに、彼にはどうでもいいことのようだった。
「次回の国王の護衛は明日の昼から夜まで。夜になったら、交代のものが1名現れるから、そうしたら国王から離れていい。それまではけして国王から離れないこと」
「……もちろん、私以外にも護衛はいるんですよね」
「いる……だけど、それ以上の情報は教えられない。その他に質問は?」
「ありません。ですが、誰かに城内を案内してほしいです」
“誰かに”とわざわざ言うのだから、サナ以外を指しているのだろう。極力サナと関わりたくないと見える。過去には、サナが新人に城内を案内したこともあったが、望まない相手をわざわざ連れ回すほど暇ではない。
「わかった。エイラに案内させる。年齢も近いから、話しやすいと思う」
「ありがとうございます」
サナは魔法アイテムでエイラと通信をつなげ、「エイラ、今、新人が私のところにいるの。城を案内してやってほしいんだけど、お願いできる?」と問いかけると、彼女は「はい! 今すぐ向かいます」と元気よく答えてくれた。通信を終えるとジャックに向き直り「彼女、優しいから。わからないことがあったら何でも聞いてね」と伝えた。ジャックはなにか言いたげに口を開いたが、エイラが勢いよくドアを開けたので話すのをやめてしまった。
「エイラ……いつもノックしろって言っているでしょう。次から気をつけて」
「すみません……」
小柄なエイラが申し訳無さそうに俯くと、弱いものいじめをしているかのような気持ちになってくる。
「こちらジャック。新しい陛下の護衛」
ジャックはエイラに軽く頭を下げた。
「はじめまして! エイラって言います。私はロード様の護衛をしています。王様とロード様は仲がよろしいので、これから仕事中に会うこともあるかも。よろしくお願いします!」
ロードとは、国王の弟である。
「自己紹介は済んだね。じゃあ、彼に城を案内してやって」
エイラは「了解です!」と元気いっぱいに返事をしてくれた。一方、ジャックは相変わらず無表情のまま「失礼します」と退室していった。記憶の中の彼は、ああではなかった。よく笑う男の子だったのだが……。
「……仕事に集中しよう」
サナは余計なことは考えるのをやめ、山積みの書類を片付けることに専念しようと決めた。
「休日? 部屋でごろごろしたり、書類を読んだり……そんな感じかな」
「正気ですか?」
ジャックは理解できない生き物を見るかのような目で見てくる。失礼なやつだ。
「……どういう意味?」
「同年代の女性は友人と街で流行りのカフェに行ったり、買い物に出かけたり、好い人とデートへ行ったりしているのではないかと思いまして」
「友人も好い人もいないし、仕事で疲れてるんだから、休みの日くらい部屋でゆっくりしたいの」
「出歩いたほうがいいですよ」
余計なお世話である。サナはジャックをじろりと睨みつけた。さすがのジャックも、今の発言はまずかったと思ったらしく、「すみません」と謝罪の言葉を述べた。
「別にいいけど。仕事にはもう慣れた?」
「はい」
「それはよかった。何か困っていることはない?」
「もっと……いいえ、何もありません」
ジャックが言いかけたことが少し気になったものの、サナは「そう、ならいい」と笑った。
「サナさんが実際に護衛するなんて、珍しいですね」
ジャックの言葉にサナは「仕方なく、ね」と微笑んだ。サナ自身、戦闘は苦手だと自覚している。それなのにどうしてこうなってしまったかと言えば、国王に指名されたから。それだけである。式典で、正装で。国王のすぐ横に立っている。それだけといえばそれだけなのだが、式典の会場は城のバルコニーだ。国王を狙うものからすれば、またとない機会だ。
(緊張する……)
昨晩は眠れなかった。手袋の下は手汗でびっしょりだ。もちろん、あちこちに自分以外の護衛はいる。それでも緊張する。現場は苦手だ。貴族のような作り笑顔を貼り付け、国王の横に立つ。周囲の警戒をけして怠らない。
……。
式典は順調に進み、もうすぐ終了……というタイミングで、民衆の中にこちらに向けられた杖が目に入った。
「危ない!」
サナは身を挺して国王を守った。そのせいで魔法をもろに食らってしまったが、仕方あるまい。身体が熱い。このまま死ぬのか。他の者達が国王を守りながら、城内に連れて行ってくれた。良い部下を持ったものだ。
「サナさん!」
ジャックが倒れたサナの身体を抱き起こす。
「何をしている。あなたも国王の護衛を続けなさい。敵はまだ、こちらを狙っているかも……しれ、な……い……」
サナは意識を失った。
「よかった、目が覚めたんですね!」
ジャックが嬉しそうに微笑んでいる。
「陛下は?」
「無事です。サナさんのおかげです」
サナは「よかった」とつぶやき、自分の額に触れた。まだ熱い。熱があるようだ。
「雇い主はわかった?」
「それが……雇い主は、王妃様でした」
サナは「王妃様?」と思わず聞き返した。
「はい。なんでも、最近陛下が相手をしてくれないから、媚薬効果のある魔法をかけてやろうと思った、と。城内で実行すれば、雇ったものがすぐに護衛に殺される可能性があると考え、今回のような式典の場を待っていたようです」
「まったく……」
人騒がせな王妃である。
「ところで……身体の火照りはいかがでしょうか。よろしければ、私が鎮めるのをお手伝いいたしましょう」
「は……? いい。いいっていうのは、いらないってこと。わかったら、さっさと部屋をでていって」
サナはジャックに背を向けて、再び眠ろうとした。彼の冷たい手が、サナの服の胸元から滑り込まされ、そっと胸に触れた。
「ん、ぁあ……っ」
熱を帯びた身体に触れる彼の手が気持ちいい。
「こんなに熱くなっている……強がりはやめてください」
「さっさとでていきなさい。これは命令だからね」
「嫌です」
胸をゆっくりとした動きで優しく揉まれる。鳥肌が立つような、ぞくぞくとした感覚。サナは頬を赤らめながら、ジャックを拒みきれずにいた。突き飛ばしてやりたい。そう思うのに、できない。身体が彼を、快感を求めている。
彼の骨ばった指が、サナの胸の先端に触れた。指先で転がすように触れられると、サナはたまらず声をあげた。
「ぁう……はぁ……ぁああっ」
ジャックの手が、サナの胸から下半身へと移動する。下着越しに、いつの間にか小さく腫れ上がった肉芽を弄られ、サナは身を捩らせた。
「ふ、ぁあ、ああ……あん……」
下着ではせき止めきれなかった愛液が、サナの太ももを濡らしている。王妃のやつ、いくら金を使って、これだけ腕の良い魔法使いを雇ったのだろう。その魔法使いが変な気を起こして、国王を殺そうとしなくてよかった。
「安心してください。時間はたっぷりありますから……」
ジャックがするするとサナの下着を脱がせる。顕わになった秘所に顔を埋める。彼女の秘所は蜜で溢れ、甘く淫靡な香りを放っている。蝶や蜂のようにその香りに誘われたジャックは、舌を伸ばした。舌先で割れ目をなぞるように舐め上げる。すると、サナの体が小さく跳ねる。
「はぁっ……んん……ぁう」
舌を蜜壺の中へ入れると、サナは一段と大きな声で喘いだ。その反応を見たジャックは気をよくしたのか、舌を激しく動かし始めた。感じたことのないような快感。誰にも触れさせてこなかった場所。本来であれば、恥ずかしさと嫌悪感で拒絶していたに違いない。しかし、例の魔法のせいで熱に犯された身体は、快感を求める。舌の動きに合わせてサナの声も大きくなっていく。そして遂には絶頂を迎え、身体をビクビクさせながら潮を迸らせる。
「あっ、んん……ん、あーーーーっ! あん……」
サナはぐったりとしたまま、余韻を楽しみながらぼんやりと天井を眺めていた。やめさせなければ。部下――幼馴染みとはいえ、今、こういうことをするのは間違っているような気がしてならない。
サナの考えなど知る由もないジャックは、彼女の蜜壺に、今度は中指を差し入れた。指の腹で、中をゆっくりと探るように触れる。肉の襞に指先が触れるたび、サナは甘い息を漏らす。ある場所に指が触れたとき、サナは一際大きな叫びをあげた。
「ここが感じるんですね……」
ジャックは執拗にその場所を責め立てた。サナは悶え、腰を浮かばせて逃れようとしたが、彼がそれを許さない。執拗に愛撫を続けられたサナの身体は、再び絶頂を迎える。大きく身体を仰け反らせ、魔物のように叫ぶ。全身の力が抜けたサナは、ベッドに沈んだ。
「そろそろ、私もよろしいでしょうか?」
そう言ってジャックはズボンを下ろすと、すっかり大きくなり血管がくっきりと浮き出た己を取り出した。ほぼ真上に向かってそびえ立つそれの先端からは、粘液がにじみ出ている。自身の手首ほどもある太さに、サナは面食らった。
恐怖、理性、不安……それから、期待。様々な感情がサナの中で入り乱れていた。あれがこれから自分の中に入る。そう考えただけで、下腹部が切なくなった。
ジャックの雄の部分がサナの秘所に当てられ、割れ目をゆっくりと押し広げていく。先端の太くなっている部分が蜜壺の入り口を越えてしまうと、ジャックはそのまま一気にすべてを入れてしまった。
「あぁーーっ! ……ん、クッ……」
結合部からは破瓜の血と愛液が混ざりあったものが溢れ出ていたが、痛みは全く感じなかった。これも魔法のせいなのだろうか。脳みそを直接いじられているのではないかと疑うような、我を忘れるほどの快感だった。ジャックがゆっくりと腰を動かし始める。サナは快感に耐える。
ジャックの唇が、サナの唇に重ねられる。舌を強引に絡め取られ、何もかもを奪おうとするような荒々しい口づけだった。その間も、身体の動きを止めることはない。呼吸さえもままならず、荒い息遣いになりながら、お互いを貪り合う。そんなことをどれくらい続けただろう。どちらの体液ともわからないもので、シーツはびっしょりだ。ジャックは、最も奥まで突き上げた後、そのまま白濁とした液体をサナの中に注ぎ込んだ。
国王と、護衛から昇進した若い女性のことを、人々は好き勝手に噂した。中には明らかにありえないものもあったが、やけにリアルな噂もあり、日々、不安は募っていった。そのうち、居ても立っても居られなくなり、気がつけば騎士団長に国王の護衛に推薦してほしいと頼み込んでいた。
回りくどいことはもうやめた。彼女と付き合い始めてから、サナに相応しい男になってもいいはずだ。順番は逆になってしまったが、彼女が目を覚ましたら気持ちを伝えよう。ジャックは優しく微笑むと、隣で眠るサナの髪を撫でた。
春一番様のリクエスト作品です。リクエストありがとうございました!