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幽霊が出る部屋(NL/幽霊)

 サナが新しく契約したアパートには、幽霊が出るという噂があった。噂を信じる人が多いのか、入居者はサナのみだった。幽霊の噂が全く気にならないといえば嘘になるが、敷金礼金無しの上に破格の家賃だ。うっかり騙されて、高級美顔器と毛皮のコートを買ったばかりのサナに、選択の余地はなかった。買うと言っても、おかしなローンで購入してしまったから、借金の額は美顔器とコートの値段よりも高くなっていた。だから、毎日死ぬほど働いた。日付が変わる頃に部屋に帰ってきて、泥のように眠る。そんな生活だからこそ、たまの休みくらいは静かに過ごしたかったのだが……。

「嘘でしょう……」

 久しぶりの休みだというのに、噂通り、部屋に幽霊が出た。心霊番組で見るような幽霊とは違い、普通の人間と区別がつかないほどはっきりと見えた。最初、不審な男が部屋に上がり込んだのかと思ったほどだ。どうして幽霊だとわかったかと言えば、ヤツの移動方法だ。足を動かしていないのに、床を滑るようにこちらに近づいてきた。

「なに?」

 こっちは疲れているんだけれど。

 普通の暮らしをしていて、何のストレスもなく、寝不足でもなければ、幽霊が出ただけで腰を抜かしただろう。だが、サナには怖がる元気すらなかった。休日を邪魔され、ただただ腹立たしかった。

「忙しいのに、ごめんね……実は、お願いがあって……」

「道連れにしようとしたって無駄だから。過労死の予定もない! 過労死ラインは余裕で超えているけれど!」

 それもこれも、自分が騙されて美顔器とコートを買ったせいだ。一人で悩み続け、恥を忍んで友人に相談したところ、クーリングオフについて教えてもらえた。しかし、友人に教えてもらえた頃には、すでにクーリングオフの期間を過ぎていた。さっさと相談していたら!

「俺……実は童貞なんだ」

 幽霊は、とても重要な秘密を明かしたかの様子だったが、サナは鼻で笑って「そうでしょうね」と冷たく言い放った。

「だから……童貞を卒業させてほしい! 童貞卒業すれば、成仏できる気がするんだ」

「……」

 何を言っているのだろう。家賃も払わないくせにアパートに住み着いている幽霊の言葉にしては、図々しいにも程がある。だが、サナは、過労で正常な判断ができなかった。

「絶対に成仏しなさいよ」

 サナは素早く幽霊のズボンを下ろし、すでにほとんど勃起している男根を手でしごく。

「う……ぁ」

 幽霊はそれだけで達した。温かな粘液が、サナの顔に飛んできた。

「ちょっと、本当に卒業するつもりある?」

 幽霊がなにか答えるより早く、彼のそれを口に含む。口の中で、先端部分を優しく舐めてやると、一度果てたそれが再び硬さを取り戻していく。

「ううう……俺は、卒業できるだけで……」

 幽霊がなにか言っているが無視して、愛撫を続ける。サナは幽霊のものをすべて口の中に含むと、ゆっくりと頭を動かし始めた。

 快感に耐えかねた幽霊が声を漏らす。勝手にアパートに住み着き、愉しんでいる。なんていい身分なのだ。

「お、俺も口でするよ……」

 その言葉を待っていたと言わんばかりに、サナは口淫をやめ、下着を脱いで床に座ると、大きく脚を開いた。幽霊は、女陰を食い入るように見ている。

「こ、これが……」

「早くしてくれる?」

 幽霊のを咥えるだけで興奮したのか、サナの秘所は濡れていた。

「う、うん……」

 幽霊の冷たい舌が、サナの蜜壺の周りに触れた。そのままペロペロと舐め始める。

「ぁ……ああ、ん……そこ、もいいけど……っ、ここっ、ここ、舐めて……」

 喘ぎながら、肉芽を指差す。幽霊はその指示に素直に従い、敏感なそこばかりを舐め続けた。

「ぁああッ、あん……ああッ!」

 このアパートには、サナ以外住んでいないし、周りに住宅はなく、噂のせいで昼間は誰も近寄らない。だから、どれだけ声をあげても、誰にも迷惑をかけずにすむ。深夜に、誰も住んでいないと思ったのか、大学生が肝試しに来たことはあった。サナを幽霊と勘違いした彼らは腰を抜かして逃げていった。それからは、夜も静かなものだ。

「も、もういい……ッ! 挿れて……」

「わかった」

 サナの言葉を聞いて、幽霊が舐めるのをやめ、十分に膨らんだ自身を蜜壺の入り口に押し当てた。そして、そのままぐっと力を込めて、挿入していく。

「あ……はぁッ、……んッ……」

 根本まで入った。すっかり興奮した幽霊が、激しく腰を動かす。

「ぁああッ、はッ……ん……ぁあ……」

 猛烈なピストンに、サナは何度か絶頂し、その度に大きな嬌声をあげた。幽霊のそれは冷たかったが、十分な硬さと大きさで、サナを悦ばせた。静かなアパートの一室に、男女の肌がぶつかる音と、愛液で満たされた蜜壺の中が男根でかき混ぜられる音が響く。

 サナは幽霊の背中に爪を立て、叫び、さらなる快感を求めて自ら腰を振った。脳が蕩けるような時間だったが、そう長くは続かなかった。

「あ、出る……」

 幽霊は、言葉通り精液をサナの中にたっぷりと吐き出した。サナの中で、幽霊の雄の部分が、射精を終えたあともビクンビクンと跳ねている。小さくなった男根がぬるりと、サナの中から出ていく。それと同時に、泡立った白っぽい粘液が蜜壺から溢れ出す。

「はぁ……ッ、はあ……」

 サナに覆いかぶさっていたはずの幽霊は、いつの間にか消えていた。成仏したのだろう。しかし――無数の気配を感じる。

「俺たちも……卒業させてもらえませんか。卒業できたら、成仏できる気がするんです……」

 サナは舌なめずりをすると「順番にね」と笑った。