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05.しあわせ

「で? アレク様に本当のことを言ったの?」

 休憩室でマリアがあまりものの野菜を齧りながら訊ねてきた。

「いや、言わなかった。でも、バレてるっぽい」

「ふーん。なんでバレたんだろうね? でも、主人には知っておいてもらった方がいいと思うな」

 マリアはニンジンを葉まで食べつくすつもりらしかった。

「さっきからじろじろ見てなんなのよ。野菜食べてるだけでしょ?」

「でもマリア……それ、生だし葉っぱだし……」

「だから何よ。食べられるのに、捨てるなんてもったいないわ。野菜は栄養素がいっぱい詰まっているんだからね。私はストリートの野菜くずで育ったのよ」

「そうかもしれないけど、メイド長に怒られるよ……」

 案の定、マリアはメイド長に見つかってこっぴどく叱られていた。

  ◆ ◆ ◆

 休憩が終わると、私は早速アレク様に呼び出された。いつもなら喜んで行くが、今回は何となく嫌な予感がして、気が重かった。

「アレク様、サナです」

 アレク様の私室に向かって、廊下から声をかける。

「ごめん、ちょっと待ってて」

 私は扉の横で待つことにした。数分後、アレク様が部屋から出てきたかと思うと、私に服をわたし、それに着替えるように命じた。渡された服は、清潔ではあったが質素で地味なものだった。私は誰もいない物置で着替えると、アレク様の部屋に戻った。

 アレク様もまた、似たような質素で地味な服を着ていた。

「アレク様、この服はなんですか?」

「まあ、いいからいいから。ついてきて」

 そう言ってアレク様は私の手を引いた。

  ◆ ◆ ◆

 アレク様と私は城を抜け出し、城下町にやって来た。城を出る途中、メイド長に見つかりそうになったときは肝を冷やした。マリアが上手いこと誤魔化してくれた。きっと、後で何か奢らされるだろう。

「どうして城下町へ?」

「気分転換だよ。たまにこうやって城を抜け出すんだ」

「アレク様、おひとりでいつもこんな危険なことを?」

 アレク様は私の唇に人差し指を当てた。

「だめでしょ、そんな呼び方したら。ここではアレクって呼ぶこと。いいね?」

「そんな恐れ多い……」

「カップルか、新婚のように振舞った方が都合が良いんだよ。兄弟でもいいけど、僕とサナは似ていないからなぁ。あ、異母兄弟の設定にする? それなら行けるかも」

 カップル……。一時とはいえ、アレク様とカップルのように振舞えるなんて。腕とか組んじゃうのか。思わず顔がにやける。

「か、カップルで!」

「ふふ、わかった。じゃ、行こうか。ちゃんと恋人らしくするんだよ」

 私は恐れ多くも、アレク様の腕に自分の腕を絡ませた。心音がうるさい。アレク様は私よりも体温が高い様だった。普段から剣術の鍛錬をされているから、筋肉がそれだけあるのだろう。

「いい子だね。とりあえず、市場でも覗いてみようか」

 私はこくこくと頷いた。