当サイトは18歳未満の閲覧を固くお断りしております。

03.キスマーク*

 次の日、シオドア様がまた懲りずに話しかけてきた。

「なあ、部屋に何か甘いものを持ってきてくれないか?」

「……」

「聞こえなかったか?」

「……」

 シオドア様が私の腕を掴んだ。

「昨日も言ったが、兄さまの言うことは聞かなくていい」

「……」

「ちっ……。こうなったら、お前を本当に投獄しなくちゃいけないな」

 大丈夫だ。恐れることはない。私はアレク様のメイドなのだから。シオドア様が私をどうこうできるはずがない。

「本気だぞ」

 シオドア様は私の腕を強く引くと、自室に私を無理やり連れ込んだ。

「おやめください! 離して!」

「兄さまもお前も、俺を甘く見過ぎだ。俺はお前を一度でも抱けるなら、どんな罰でもうける」

 そう言うと、シオドア様は私にくちづけた。私の呼吸を奪い、支配するような荒々しいくちづけだった。

「ふ……はっ、や……やめっ」

 シオドア様をなんとか押しのけようと私は暴れた。しかし、暴れれば暴れるほど、さらに強く押さえつけられた。

「教えろ。兄さまとはどこまでしているんだ」

「どこまでって、何のことですか?」

 シオドア様はにやりと笑うと、私をベットに押し倒した。

「サナ、俺のものになれ」

「嫌です。お願いだから、やめてください……」

 シオドア様は私の首元に顔を埋めた。首筋をつーっと舌で舐められる。

「っ……」

「兄さまには俺から話す。お前は何も心配しなくていい」

「そういうことじゃ……」

「わからないのか? 兄さまは、お前を本気で愛したりなどしない。知らないわけじゃないだろう。兄さまには婚約者がいるんだぞ」

「……そんなの、わかって……」

「じゃあ、わかるだろ。俺のメイドになった方が良いって」

「……」

 首筋にぴりっとした痛みが走った。

「何を――?」

「別に。ただのキスマーク」

「なんてことを……。メイド長に怒られます」

「それなら、俺がメイド長に話しておく。心配するな」

 そう言って、シオドア様は私の頭を撫でた。

「ごめん。こんなことしてごめん」

「シオドア様……」

「本当にごめん」

 シオドア様のしたことは到底許せることではなかったけれど、肩を震わせて涙を堪える彼を責めることはできなかった。

 シオドア様の部屋を出た後、私は真っ先に厨房に行った。厨房では刃物で怪我をする人が多いため、救急セットが置かれているのだ。

「こらっ! またサボってたでしょ」

 仕事仲間のマリアが私の肩を軽く小突く。

「ちょ、ちょっとね……」

「やだ、それ、救急箱? 怪我したの? 見せてみて。私がやってあげる」

「だ、大丈夫だからやめてって……あ」

 手でなんとかキスマークを隠そうとしたが、マリアに強引に手を引きはがされてしまった。

「何があったの?」