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豆まき(特殊)

 どうしてこんなことになってしまったのか。当の本人であるサナが一番知りたかった。今まで気がつかなかっただけで、生まれつきこうだったのか……。

「う……あ……♡」

 隣の家の子が、「鬼は外ー」と言いながら豆をまいただけだ。その子の投げた豆が数粒サナに当たった。それだけだったのだが……。

「あ、コラ、お隣さんに当たったじゃない!」

 豆が当たっただけだというのに、サナはその場に蹲った。サナは毎夜一人でしているが、この感覚は最新のアダルトグッズでも味わえない。

「だ、大丈夫ですか? まさか、目に当たったとか?」

 隣の婦人が心配そうに覗き込む。サナは慌てて立ち上がり、「や、やられたふりです……」と笑った。

「はは、すみませんねえ、付き合ってもらっちゃって」

「お子さん、元気ですね。では、仕事に行きますので……」

 サナは下着をぐっしょり濡らせたまま、歩き始めた。

 * * *

(はあ……どうしちゃったんだろ、私の身体……でも、豆まきなんて今時やらないだろうから、もう平気だよね……ん?)

 スーパーの前が、何だか騒がしい。

「豆まきキャンペーンやってます~。ご参加いただけましたら、割引クーポン差し上げますー!」

(え……やば……)

 主婦が豆を投げようと、かまえているのが見えた。さっさと通り過ぎてしまおうと、早足になる。しかし、間に合わなかった。

「おにはーーそとーーー!」

「うはぁあ♡」

 パラパラパラ……。

 サナの身体に当たった豆が、地面に落ちていく。サナは快感により全身の力が抜け、その場にへたり込んだ。

「だ、大丈夫ですか?!」

 スーパーの店員が慌ててサナに駆け寄った。

「はい……大丈夫です……」

「ほ、本当に大丈夫ですか……?」

 スーパーの前にいた人々がざわつき始めた。

「なんかあの人、変だったわよ」

「確かに豆があたったみたいだけど……豆よ」

「やだぁ、当たり屋なんじゃない?」

 いたたまれなくなったサナは、「大丈夫ですから!」と立ち上がると、その場を走り去った。

 * * *

 帰り道、サナは「はあ……今日は散々だった……」と独り言ちた。

 豆を投げられると身体が感じてしまうという謎の現象には悩まされるし、そのせいで仕事には遅刻するし。仕事中もどこからか豆が飛んでくるのではないかと気が気でなかった。

 そんなサナの前に、大男が立ち塞がった。その大男には角があった。

「おいみんな、こいつ、豆持っていないぞ」

 物陰から、鬼どもがわらわらと出てきた。

「何……? 鬼……?」

 困惑しているサナを、鬼達が睨みつける。

「いつも俺たちに豆を投げつけるなんていう、地味な嫌がらせしやがって。お前も味わえ!」

 鬼が大きく振りかぶり、その腕を振り下ろした瞬間、大量の豆がばらまかれた。

「はぁあッ♡ イクぅうッ♡」

 嬌声を上げながら、その場に崩れ落ちるサナに、鬼が目を丸くした。

「な、なんだ……? 何か様子が……」

 この異変に気がついたのは、サナの前に最初に立ち塞がった鬼のみだったらしく、後から現れた鬼達は気がつかなかったようだ。大きな手に豆を握りしめ、サナに近づいていく。

「お、おい、待て……何か様子が――」

「長年の恨み!」

 バラッ、パララ……。

「ぉおあッ♡ ああッ♡ ん♡」

「喰らえ!」

 パラ、パラパラ……。

「イク――――――――――ッ♡♡」

 サナは仰向けに倒れ込み、涎を垂らしながら絶頂した。顔は赤らみ、息は荒くなっている。その様を見て、鬼達全員が異変に気がついた。

「な、なんだこいつ……」

「へ、変態だ! 逃げろ!」

 鬼達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 * * *

 10分後、立ち上がれるようになったサナはスーパーで豆を買って帰った。